主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2025年日本地理学会秋季学術大会
開催日: 2025/09/20 - 2025/09/22
無人航空機や地上型の写真測量やレーザ測量等により、地形解析や時系列変化抽出といった研究目的で、比較的小規模(~1 km2)の地形を対象とした高精細地形情報が各所で得られるようになってきている。こうした3次元(3D)地形情報は、デジタル標高モデルや点群データ、メッシュ(ポリゴン)データといった形で利用されるが、これらを用いて対象とする地形の立体模型を作成することも可能となる。
本研究では、地形学的な研究目的で取得された比較的小規模な地形の高精細3D地形情報や、オープンデータとして利用可能な広範囲低解像度の地形情報を用いて、スケールの異なる地形の理解を促すために、3D地形模型を作成するこども向けのワークショップの実践とその効果を検討する。
小学校高学年および中学1・2学年を対象として、地形模型を工作する一日ワークショップを、日本学術振興会による公募型アウトリーチプログラムであるひらめき☆ときめきサイエンスの一環として、2023年から2025年の8月(夏休み期間中)にそれぞれ実施した。ワークショップの呼びかけとして、『一見、変わらずにずっとそこにあるように思われる「雄大な自然」としての景観も、実際には少しずつ、時には急激に、変化をし続けています。レーザ測量や無人航空機による高精細3D地形情報を用いて、自然景観のミニチュア模型を作ります。色を塗ったりして想像を膨らませつつ、「見た感じ」「触った感じ」から、変わりゆく地形景観を体感してください。』といったことを強調した。すなわち、デジタルによる仮想的な3D可視化だけでなく、実体模型を用いることにより、視覚や触覚も活用した地形の観察が可能となり、模型にあらわされる地形の成り立ちや将来的な変化について、より深い理解を誘導することができると考えられる。ここで、3Dプリンタで出力した表面を反転させた地形模型を複数用意し、それを紙粘土に押し付けることで、紙粘土による地形模型を複数作成することができる。これに着色や、あるいは改変を加えることで、参加者の自由な発想による地形景観の作品を制作してもらった。さらに、グループごとに代表的な作品の解説を行ってもらい、現実の自然景観やその将来的な変化について全員で議論した。一方、工作に先立ち、補足的な要素として、講義のほか小型無人航空機の操縦体験や、ヘッドマウントディスプレイによるヴァーチャル地形景観のVR体験等も行った。
実質的な時間としては一日内の短いワークショップではあるが、理科、社会、美術(図画工作)といった科目の要素が入り混じり、夏休みの課外学習としての効果があったと観察された。一方、こうした手を動かす室内ワークショップを持続的な枠組み、とくに学校教育の中に組み込むには、その教科的な位置付けや時間的・費用的な制約といった課題が残される。