主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2025年日本地理学会春季学術大会
開催日: 2025/03/19 - 2025/03/21
Stewart and Oke (2012)が提唱したLocal Climate Zone (LCZ)は,都市気候だけでなく,様々な研究分野で活用されている.一方,日本などの都市に対して,LCZクラスの分類が不適切となるケースが指摘されている(Chiba et al., 2022).そこで本研究は,国土交通省PLATEAUデータなどの高品質な都市街区・自然地理情報を用いて,日本の都市環境に適合するLCZクラスを再定義した「日本版LCZ」の開発を目的とする.
対象地域として,大阪府大阪市,静岡県静岡市および埼玉県さいたま市を選定した.分類に使用するパラメーターには,建蔽率,平均建物高さ,不浸透面率,表面熱伝達率,建物数,建物階数,エネルギー消費を採用した.各パラメーターは,対象地域内で100mメッシュ毎に算出された(N=68681).分類は,標準化したパラメーターを自己組織化マップ(Self-Organizing Map: SOM)に適用した後,k-means法でクラスタリングすることで実施された.パラメーター作成には,PLATEAUデータを用いた.また,開発された日本版LCZと各クラスにおける気象との関係を調査するため,2024年9月4~5日の大阪市街地において,暑熱観測を実施した.
図1に,大阪市における分類結果を示す.各クラスターの空間分布やパラメーターの値から,都市形態や土地被覆の特徴に従って適切に分類されたことが分かる(図省略).図1の結果を基に開発された日本版LCZを図2に示す.日本版LCZでは,都市街区が11クラスに分類された.なお,クラスター12~15は,自然に関するパラメーターが高いため,都市クラスから除外した.日本版LCZのクラス3~5および9~11は、従来のLCZと類似する.一方,その他は新しく提案された日本独自のクラスである.住宅街であるクラス6~8は,その他クラスより表面熱伝達率が約200 Jm-2s-1/2K-1 低く,木造建築が多い日本の住宅街の特徴が表れた分類結果といえる.以上のことから、日本版LCZが従来版よりも日本の都市をよく再現していることが示唆される.