主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2025年日本地理学会春季学術大会
開催日: 2025/03/19 - 2025/03/21
1.はじめに
近年,夏季の局地的強雨が増加しており,都市域を中心とした地域では,特に浸水や道路の冠水などの被害の拡大が懸念されている。局地的強雨に関しては,降水量に着目した都区部における降水分布やその原因に関する研究が多く,時間的にも空間的にも詳細な解析が可能なデータを用いて,降水強度に着目し,平野部から山地部までを含めた強雨の発生頻度や降水域の移動に関する研究は少ない。そこで,本研究では降水強度に着目し,東京と埼玉の夏季における強雨の頻度が高い領域を抽出し,その強雨域の特徴を明らかにすることを目的とする。
2.データと研究方法 強雨域の解析には,時間的にも空間的にも分解能の高い1kmメッシュ全国合成レーダーエコー強度GPVデータを使用する。研究対象期間は,2016~2023年の8月である.降水強度別の頻度分布の解析により,まず山地部と平野部の降水特性を明らかにする。さらに, 平野部の80mm/h以上の強雨の頻度が高い領域について,降水域の形状と移動の特徴を明らかにする.
3.結果と考察 解析の結果,山地部では0.1mm/hに代表される強度の小さな降水の頻度が高い(図1)。一方,平野部では80mm/hに代表される強度の大きな降水の頻度が高く,山地部と平野部における降水強度の違いが明らかとなった(図2)。さらに,平野部では所沢,世田谷,八王子の3領域で強雨の頻度が高いことが明らかになった。平野部3領域について,降水域の形状と移動の観点から着目すると,所沢と八王子では,団塊状の降水域がその場で発生・発達するパターンと線状(東西)の降水域が西から移動してくるパターンが多い。世田谷では,団塊状の降水域がその場で発生・発達するパターンと団塊状の降水域が北から移動してくるパターンが多い。