演者らは、複数の独立した気候代替データをもとに過去数百年間の日本の冬・春季の気候変動を復元することを目指している。その一環として、長野県で得られた木曽ヒノキの年輪幅データを山形県川西町の庄屋の日記天候記録から求めた天候に関する指標(降雨日数、降雪日数、降雪率など)と1831~1961年の期間を対象として相互比較した。その結果、木曽ヒノキの年輪幅と2月の山形の降雨日数とに有意な正相関が認められた。2月の降雨日数は本州の暖冬年に増加する傾向があるので、本研究の結果は、2月に本州が温暖で、山形の降雨日数も多い年に、木曽でヒノキの年輪幅が拡大する傾向があることを示している。