主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2025年日本地理学会春季学術大会
開催日: 2025/03/19 - 2025/03/21
本研究では,他業種が商業集積する東京都秋葉原を対象に入居事業者や建物所有者,商業団体など地域に関与する各主体の意思決定に着目して,これらが商業地形成に与える影響について検討した.主に聞き取り調査と登記事項証明書を用いた分析の結果,事業者は業界の流行に便乗した立地や秋葉原への愛着・経験に由来する立地,一般的な経営戦略が立地の動機となっており,地区計画による制限を除くと各事業者の判断で立地し,結果として集積の形成・加速に影響を与えていた.住民の所有者は地域の安全や祭事を最重視していた.商業地秋葉原に対して強い関心を持たず,秋葉原での事業経験者を優遇するものの,業種の制限が少ないという選好の要素が他業種商業集積の形成を後押ししていた.しかし,地縁的な意思決定は住民の所有者の減少によって効力を下げている.外部所有者はリスクや治安の観点を低く評価し在地所有者よりも制限が少ない.定期借家制度を利用して入居者が最も高い賃料を支払える業種に限定する傾向にあり,特的業種の集積を招くものの他業種が排除されていた.このように,商業地の形成において進出する事業者の存在と同様,それらを受け入れる所有者の意思決定の影響は大きい.また,その所有者の属性(在地か外部か)の割合が地域全体の様相を決定することが示唆された.