日本地理学会発表要旨集
2025年日本地理学会春季学術大会
セッションID: P034
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長野県開田高原における過去100年の草地面積の変化
*岡本 透太田 陽子八巻 一成
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抄録

長野県木曽郡木曽町開田高原(旧西筑摩郡開田村)を対象にして明治期以降の草地面積の変化を、統計値および地形図の地図記号の読取、空中写真の判読などから明らかにした。 統計値は、第二次世界大戦前は1874年の郡村誌開田村を最も古い資料として西筑摩郡統計書など、第二次世界大戦後から町村合併前の2004年までは長野県統計書、農林業センサスなどから原野、牧場、森林以外の草生地といった項目を草地として集計した。1911年の旧版地形図では「荒地」「矮松地」を草地とし、地類境界を植生の境界としてGIS上で草地の範囲を抽出した。空中写真は1948年の米軍撮影、1963年の林野庁撮影、1975年および1977年国土地理院撮影を用いて草原の範囲を抽出した。1980年代以降は環境省植生図から自然草原、二次草原、牧草地等を草地として抽出した。各図像資料から抽出した草地をGIS上でオーバーレイ解析した。 統計値の草地面積は、第二次世界大戦前までは3,000ha弱程度で推移した。戦後直後から1950年代にかけては、同年でも出典により値が大幅に異なる年があり、年ごとの変動が大きかった。これは、草地に関する項目、区分が複数にわたることや、集計の方法の違いなどによると考えられた。1960年代初め以降、草原面積は時間の経過とともに漸減し、2004年には181.4haであった。一方、図像資料の草地面積は、最も古い1911-12年測図1/5万地形図では2,441.4haと同年代の統計値よりやや小さく、2019年の植生図では94.5haであった。最新の資料の草原面積は、最も古い資料を100とした場合、統計値では6%、図像資料では4%程度にまで減少していた。

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