日本地理学会発表要旨集
2025年日本地理学会春季学術大会
セッションID: P018
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農地管理用アプリ DigiAgriApp の開発と日本での活用
*岩崎 亘典デルッキ ルカ
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抄録

はじめに

農業分野におけるデータ管理の効率化と情報活用の重要性が高まる中,エドムンド・マッハ財団のデジタル農業ユニットは,農地に関する多種多様なデータを一元管理する無料かつオープンソースのアプリケーション「DigiAgriApp」を開発した。本発表では,DigiAgriAppの概要についてと,日本における活用推進の取組について報告する。

DigiAgriAppの概要

DigiAgriAppは,気象データ,リモートセンシングデータ,観測記録,作業履歴など,農業現場で得られる多様な情報を統合的に管理することを目的としている。主な機能として,農地データの管理,作業・観測データの記録,収穫・排出物の管理,データの可視化が挙げられる。DigiAgriAppでは,モバイル端末上に現地圃場に情報を表示するとともに,フォームを利用することで簡便なデータ入力が可能である。これらの機能を実現するために,サーバー側にはPostgreSQL/PostGISとDjango REST Frameworkを用いたシステムを構築し,クライアントアプリケーションはFlutterを用いてマルチプラットフォーム対応としている。また,QGISプラグインを開発し,地理情報の管理やデータの同期を容易にしている。

活用事例

DigiAgriAppは既に実運用において成果を上げている。例えば,約18ヘクタールのりんご果樹園管理において5.5ヘクタールが個別株までマッピングされ,3,000本以上の植物が定期的に観察・記録されている(図2)。この結果,栽培品種や台木の情報管理,作業履歴や排出物の履歴把握,リモートセンシングデータと気象観測データの相互参照による高度な栽培管理が実現されている。さらに上記の圃場で, 20,000本以上を対象とした機械学習を活用した病害虫検出システムとの連携試験を行った。

今後の改良と日本での活用

今後の展望として,DigiAgriAppの機能拡張とユーザーコミュニティの構築を進めるとともに,日本市場向けの改良および日本語化を推進する。特に,AIによる病害虫診断システムとの連携を強化し,ブドウ透翅蛾などの害虫検出機能を実装する予定である。また,JSPSの短期滞在制度を活用して日本に滞在する期間中に,日本の農業環境に適した機能の追加やインターフェースの日本語化を行い,現地ユーザーのニーズに応える形でアプリケーションの利便性を向上させる。これにより,日本の農業現場におけるデータ管理の効率化と生産性向上に寄与することを目指す。DigiAgriApp のソースコードや最新情報,ドキュメントは下記リポジトリおよび公式サイトで公開している。

レポジトリ:https://gitlab.com/digiagriapp/

公式サイト: https://digiagriapp.gitlab.io/digiagriapp-website/

謝辞

本プロジェクトは,Fondazione Valorizzazione della Ricerca Trentina,Hydrologisの支援を受けた。また、本発表にあたり、日本学術振興会短期招へい研究の支援を受けた。深く感謝します。

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