日本地理学会発表要旨集
2025年日本地理学会春季学術大会
セッションID: 738
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シュミットハンマーを用いて把握した岩盤強度と地すべりや地質との関係性
2004年新潟県中越地震を例に
中村 天嶺*小荒井 衛
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抄録

1.はじめに

松倉・青木(2004)によると, シュミットハンマーを用いた非破壊での岩石や岩盤強度の計測が可能である. 計測された値はR値0~100(目盛り上では10~100)として変化する. R値10以下の極端に強度が弱い岩盤では値は無効になるため, 風化した地層や軟らかい地層には適さない. しかし, 本研究では岩盤強度と地すべりの発生しやすさとの関係を検討するため, 比較的硬い露頭を探して計測を行い, 他の要因である岩相, 地質構造等と組み合わせて, 2004年中越地震での地すべり密度との関係を解析した.

2.調査地域

調査地域は新潟県長岡市山古志地区であり, 堆積岩主体の新第三紀-第四紀の地質からなる. 地殻変動が激しい日本有数の活褶曲地帯でもあり, 斜面崩壊・地すべりも頻発している. 2004年新潟県中越地震では, 新潟県長岡市山古志地区, 川口地区, 小千谷市などを中心に多くの地域で斜面災害の被害をもたらした. また, 調査地域東側の魚沼市小平尾では, 地表地震断層が出現した.

3.研究手法

シュミットロックハンマーKS型 (プロセク社)を使用し, 約30カ所でR値の計測を行った. 連打法を1カ所に対して20回行い, 平均の値を出す. これを各露頭で2~3回行い平均値を出し, 打撃角度及び水分補正を行った. 現地にて地質調査も行った. 国土地理院の地震時地盤災害の4分の1地域メッシュインベントリ(岩橋ほか, 2022: 国土地理院, 2005: 鈴木ほか, 2005)を用いて, R値と地すべり密度分布と岩相, 地質構造をQGIS(3.28.2)上で重ね合わせて関係性のわかる地図を作成した.

4.結果・考察

R値と地すべり密度の分布と褶曲軸を重ね合わせたものを図1に示す. 背斜・向斜軸の間で比較的R値が低く,地すべり分布密度が高い傾向が読み取れる.

計測したR値は全体的に低い値を示し, 泥層で最大値34.4を示した. 全体的に風化した地層が多くあり, R値が計測できない露頭が多く,計測できた露頭は約30箇所であった.

R値が高くなるほど斜面の地すべり密度は高くなる傾向 が若干みられた. しかし, R値20付近をピークにして, 高くなるほど地すべり密度は低くなっている. また, 流れ盤で地すべり密度分布は高いが, R値については流れ盤で高く, 受け盤で低くなったため, R値と地質構造とは関係しない結果となった.

一方, 岩相についてR値は泥・シルト層よりも砂層で高くなった. ハスほか(2011)などから地すべりは砂層よりも泥・シルト層で崩れやすいことが分かっているため, その結果とは整合的である. 今回の計測ではR値と岩相に関係性があることが示唆された.

5.今後の課題

岩盤強度の計測点数が少なく,統計的な処理ができていない.そのため, 計測点を増やすことで, 面的に情報を集める必要がある. また, 他の地形・地質要素について,DEM等を用いたGIS解析を行い, 統計的な検討を進めていきたい.

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