1.はじめに
これまでの地理学や地理教育の研究では、学校教育や大学教育における「まち歩き」や巡検、あるいは地域活動への参画という意味での「まちづくり活動」の検討が進められてきた。また、大学の部・サークルとして「まちづくり」や「まち歩き」を主たる活動として地域とつながりをもつ例はさまざまな大学でみられる。大学の正課活動である講義や演習、ゼミ等でまちづくりへ参画する例も多いが、今回は通常、課外活動に位置づけられるサークルに着目する。大学におけるサークルは学生による自主運営が基本であり、活動方針や内容は学生たちの話し合いで決められることが一般的である。そのため正課活動よりも学生のやりたいことや興味あることが活動に反映されやすい。本発表の事例は、栃木県宇都宮市に所在する小規模な地方私立大学である宇都宮共和大学における「まちまちサークル」の活動を取り上げる。
2.「まちまちサークル」の概要
宇都宮共和大学まちまちサークル(以下、まちまちサークル)は大学公認サークルであり、その活動内容は「まちづくり」と「まち歩き」からなる。それ以前は「まちづくり」サークルと「まち歩き」サークルが別々に存在していたが、2つのサークルが2024年4月に合併し、まちまちサークルとしての活動を開始した。1~4年生の合計13人のメンバーが所属している。
3.まちまちサークルの活動内容
宇都宮市を中心としつつも栃木県内を主なフィールドとして、まち歩きや、まちづくりへの参加を主要な活動と位置づけている。2024年の活動としては宇都宮共和大学宇都宮シティキャンパスの近くを流れる田川でのイベント活動や、宇都宮空襲の学習と関連する戦災遺跡を巡るまち歩きなど宇都宮市内を対象とした活動が多くなっている。また、宇都宮市主催のまちづくり提案発表会へまちまちサークルから2年生の3名が出場した。
4.まちづくり提案発表会への出場と提案内容の概要
提案の題目は「田川を起点としたにぎわい復興~FROM TAGAWA TO THE FUTURE~」である。本提案に至った背景としては、以下の通りである。JR宇都宮駅東口には宇都宮ライトレール(通称、LRT)が開通し、宇都宮ライトキューブや駅前広場などが作られ、にぎわいが創出されている。他方、宇都宮駅西口はLRTの延伸計画はあるものの、歩行者通行量の減少傾向がみられ、またにぎわい創出のための広場や施設も限られている。そこで、まちまちサークルの学生3名は宇都宮駅西口前を流れる田川に着目し、田川をにぎわい創出の場として活用していく方策を考えていった。田川を活用したまちまちサークルの活動としては、4月に宮桜祭、6月に「みんな田川でバーベQ!」、および10月にサークルメンバーで行った田川まち歩きがある。それらの経験からソフト面の提案として「田川にぎわい協議会」の発足、水害対策の広報として石碑型ハザードマップの設置、またハード面の提案として田川遊歩道の拡張やスロープの設置などの提案を行なった。まちまちサークルの発表は、まちづくり提案発表会に出場した13団体中で2位の成績を収めた。