アジア経済
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セミナー報告 ――『アジア経済』への招待――
セミナー報告① 査読ってどんなもの? ――『アジア経済』誌の場合――
佐藤 章
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2018 年 59 巻 4 号 p. 58-72

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査読は重要な意義をもつ

どうもこんにちは。佐藤章と申します。『アジア経済』の編集部と編集委員を兼任しています。どうぞよろしくお願いします。

佐藤章氏

私は,アジア経済研究所では,アフリカ地域担当として研究も行っています。おもな対象国は西アフリカのコートジボワールです。この国は赤道直下にあって非常に暑い熱帯雨林地帯の国ですが,今日(2018年7月14日)の東京の気温は実に35度ということで,コートジボワール以上に暑いと感じます。外国の研究をなさる方はだれでも研究対象国の気候と付き合う必要がありますね。日本と大きく異なる気候の場合には,それがまた研究に際してのひとつのチャレンジとなるわけですが,いまや研究の拠点である日本においても,気候と戦いながら研究をしなくてはいけない時代になったのかもしれません。このようにたいへん気候が厳しいですので,今日は少しのんびりした気持ちでお聞きいただければと思っています。

とはいいましても,本日のお話は,査読についてです。非常に生々しいテーマであります。

査読付きジャーナルへ論文を発表することの大事さは,みなさんご存じのことと思います。なによりまず,研究業績として必要です。有名なジャーナルに論文を掲載できれば,自分の研究を広く知ってもらうことができます。査読――研究者による論文の審査――はその際の大きな関門となります。

査読なしのジャーナルも,もちろんあります。基本的には書けば載るというタイプのものです。他人の評価に縛られず自由に書きたいという場合には便利かもしれません。他方,どうしても,「この程度でだいじょうぶでは?」という調子で,手前勝手に自分の原稿の水準を甘めに設定してしまうおそれが多分にあります。自分の研究を伸ばしていくうえではプラスにならないかもしれません。また,査読付き業績と比較して,査読なし業績は注目度の点で今ひとつ見劣りがするかもしれません。

やはり,これから研究者として生活をしていこうといううえでは,査読付きジャーナルへのチャレンジが必要になってくるだろうと思います。

われわれジャーナルの運営側には,査読付きジャーナルを運営するからには,すぐれた論文の発表の場として機能したいという思いがあります。うまく機能することができれば,それをとおして学術に貢献できるでしょう。多くの投稿原稿をいただいて,査読制度をとおして質をコントロールし,それを広く学界に出してあげる――こうすることによってジャーナルの存在意義が成り立つわけです。

さらにここには,みなさんのように投稿する方にとっては業績の獲得,われわれジャーナルの運営側にとってはそれの発表,学術コミュニティー全体にとってはさらなる発展という,三者がともに利益を得る関係が存在してもいるわけです。

そして,その出発点はなにより,最初にアクションを取っていただくことになる投稿者のみなさんということになりますので,それがとても大事なことだというのはわかっていただけると思います。

今日のセミナーのねらい

このことを頭に入れたうえで,次に本日のセミナーのねらいを申し上げます。

私は『アジア経済』編集部の仕事を4年ほどつとめてきました。そのなかで折々,思うことがあります。原稿が投稿されてきますと,受け付けた当方は,「はい,原稿を受け付けました。査読結果が出たらご連絡します」とお返事します。通常ですとだいたい2~3カ月ぐらいたって結果のご連絡をするわけですけれども,投稿された方の心情を想像するに,その2~3カ月のあいだにいったいなにが行われているのだろうという,さぞや不審な気持ちをお抱きになるのではないでしょうか。

いざ投稿してはみたものの,そのあとしばらく一切連絡がない期間があり,数カ月後に結果が連絡されてくるわけですが,やはり,唐突な感じがするのではないかと思うのです。通知されてきた結果が厳しい評価であった場合には,唐突感はなおさら高いのではないでしょうか。

このようなことも含め,審査結果を待ち,受け取るという過程には,不安感をかきたてる要素がずいぶんとあるのではないか――私が折々に思ったこととはこのことです。

人間はだれしも,不安感や恐怖心をおぼえかねないことにはどうしても手を出しづらいものです。もしかすると,こういった心理的なことが査読付きジャーナルへの投稿のハードルを高くしているのではないだろうか――そのように考えたことからこの企画は出発しました。査読がどのようなものなのかを,未来の投稿者の方に知っていただくことで,不安を解消していただき,チャレンジしてもらいたいというわけです。

そこで,本日は大きく3つのことをお話ししたいと思います。まず,「1.ジャーナル掲載への道は投稿先の選定から」,次に「2.審査プロセスの全体像を把握しよう」,最後に「3.査読者はどこを見ているのか」と進んでまいります。

『アジア経済』というジャーナル

本編に入る前に,私たちがどのようなジャーナルを運営しているのか,少しご説明をさせていただきます。

『アジア経済』は1960年に創刊されました。発展途上国を対象とした社会科学分野のジャーナルであることを掲げています。ただ,歴史や人類学の論文も載せていますので,人文社会科学を広く対象としているジャーナルとお考えいただければと思います。ながらく月刊で刊行してまいりましたが,1号1号きちんと企画をして刊行していこうという方針のもとに,2012年からは季刊での刊行となっております。

季刊化とともに企画と編集の体制を大幅に拡充しました。

まずは,編集委員会に外部の有識者をお招きしました。それまでは創刊以来,ずっとアジア経済研究所の職員のみで編集委員会を構成してきたのですが,外部の方の視点を取り入れながら,査読付きジャーナルにふさわしい姿を積極的に追求し,改善とステップアップを図ることがねらいです。

これまでにおつとめいただいた外部委員の方は,早稲田大学の久保慶一先生,慶應義塾大学の駒形哲哉先生,一橋大学から法政大学に移られた浅見靖仁先生がいらっしゃいます。現在は,のちほどご登壇いただきます,東京大学の有田伸先生,東京外国語大学の澤田ゆかり先生,慶應義塾大学の粕谷祐子先生におつとめいただいています。

外部委員の先生からいただいたアイディアを生かした取り組みとしては,編集委員会があらかじめテーマを設定して広く投稿原稿を募る公募特集があります。これは「権威主義体制における議会と選挙の役割」(2013年12月号)と「新興国の経済発展と中小企業」(2015年3月号)という2つの特集として実を結んでいます。

外部委員制度の導入のほかには,プレレビュー制度の導入による査読体制の強化――これはあとでくわしくお話しします――や書評欄の充実が取り組まれています。書評欄の充実のために,書評する本や評者の選定に専門にたずさわる分科会を設置しました。様々な学術分野や地域を対象とした本を書評で取り上げることによって,『アジア経済』がカバーする研究領域を毎号の誌面に体現することを心がけています。

まずは投稿規定を熟読しよう

では,本題に移りましょう。まず,「1.ジャーナル掲載への道は投稿先の選定から」です。

ジャーナルに投稿しようとするのであれば,まずは投稿先選びが課題となります。

みなさんそれぞれの研究のペースがおありだと思いますし,原稿がなければ投稿もできないわけですから,とりあえず自由に執筆して投稿先はあとから探すということでもちろんいいのです。

ただ,ジャーナルによっては分量の上限が設定されていたり,何号に掲載したいのであればいつまでに投稿してくださいという期限が設定されていたりする場合があります。学会が刊行するジャーナルの場合には,学会の会員にのみ投稿資格を認めている場合も多いです。そういった投稿条件は原稿の完成前にあらかじめ把握しておきたいところです。

そうでないと,例えば,せっかく4万字の大作を仕上げたにもかかわらず,2万字までしか受け付けていないことにあとになって気づき,泣く泣く分量を削ったとか,投稿そのものを断念するという事態が起こりかねません。

目当てのジャーナルについて投稿条件をきちんと調べ,それを頭に入れながら研究と執筆を行うということが,まずはおすすめしたいことです。

どこのジャーナルでも投稿規定というものを定めており,投稿に必要な条件についてはそこに明記されているはずです。まずは投稿規定を熟読しましょう。

投稿資格,受け付けている分野やテーマ,原稿のジャンル――論文や研究レビューや書評,それから調査報告などいろいろあります――,投稿の期限,分量,それから,こういった書式で出してくださいとか,必ずハードコピーで送ってくださいとか,受付はメールだけに限りますとか,各ジャーナルそれぞれに条件が規定されていますので,あらかじめしっかりチェックしておきたいところです。

『アジア経済』ではどうなっているか,ひとつの例としてご紹介しましょう。

『アジア経済』では,投稿にはとくに期限を定めず,常時受け付けています。いつでもご投稿いただけます。投稿資格に制限はなく,どなたでもご投稿いただけます。事前登録も必要ありませんし,投稿料などの金銭的なご負担が発生することもありません。

受け付けている原稿は,発展途上地域を対象とし,政治経済,社会,法律などに関する論文,研究ノート,研究レビュー,資料,現地報告,研究機関紹介,書評などで,日本語で書かれた未発表のもの,と定めております。非常に広いカバレッジをもつジャーナルだということがおわかりいただけると思います。

分量に関しても特徴があります。論文や研究ノートであればおおまかに4万字までのものを受け付けています。投稿規定ではもう少し別の表現をしていますので実際に投稿なさる場合は別途ご確認いただきたいのですが,目安としては4万字とお考えいただいてだいじょうぶです。日本のほかのジャーナルですと,分量の上限がこれの半分の2万字ぐらいというところが結構多いと思いますので,『アジア経済』の特徴は長い原稿も投稿できるところにあるといえるでしょう。

投稿の条件のひとつに「未発表のもの」ということがありますが,これについて補足をさせてください。仮に未発表ではあっても,ほかのジャーナルに投稿中の原稿は別です。同じ原稿を同時期に複数のジャーナルに投稿することは,二重投稿とよばれる行為に該当します。これは審査にかかわる研究者コミュニティーの資源の浪費につながるため避けるべきとされており,研究不正に該当する行為と見なされています。

さらに補足しますと,あるジャーナルに投稿して採択されたあと,掲載されるまでの期間に――つまり,まだ原稿が「未発表」である段階で――,もしかしたら,もうワンランク上のジャーナルでも採択になるのではと考えて,別のジャーナルに採択済の同じ原稿を投稿するという行為も二重投稿に当たります。「未発表」ということにまつわる留保条件として,きちんと頭にいれておきたいところです。

攻めの情報収集で論文をさらにブラッシュアップ

投稿規定の熟読が済んだら,さらに攻めの情報収集ができます。ぜひおすすめしたいのは,そのジャーナルのバックナンバーを確認することです。どのジャーナルでも最近はウェブでバックナンバーを公開していることが多いので,バックナンバーの確認は容易にできるようになりました。バックナンバーをくわしく見ることで,次に取るべきアクションの手がかりを得ることができます。

まず第1点目として,みなさん,それぞれ研究テーマをおもちですが,自分の研究がほかにもたくさんの研究者が取り組んでいる研究なのかそうでないかを,バックナンバーの確認から知ることができます。

バックナンバーをぱらぱらとでいいので眺めてみてください。自分と共通する問題関心や研究テーマの論文に数多く出会えれば心強いでしょう。自分のテーマに自信をもって取り組むことができますし,ほかの方とは異なる自分なりの特徴を再検討するよい機会になるはずです。

自分と関心が近い論文がそれほどなかったという場合にも,心配する必要はありません。人が注目していないテーマなのだからと,思い切りよく取り組めばよいわけです。また,本当に取り組むに値するテーマなのかを再確認する機会にもなるでしょう。

さらに,自分の研究テーマは学界で少数派だとなったら,自分のテーマに必ずしもぴったりではない方が査読者となる可能性が浮かびます。そのことに思い至ったならば,自分の研究テーマの意義を査読者がきちんと把握できるよう,いっそう気をつけて書くという対応が意義をもつにちがいありません。

要は,バックナンバーからの情報収集は,自分が学術コミュニティーのなかでどのような位置にいるかの手がかりをつかみ,それにあった適切な執筆戦略を取ることを可能にしてくれるというわけです。

バックナンバーから確認できることの第2点目として,研究手法とジャーナルのマッチングが挙げられます。編集部にもときどき質問が寄せられます。例えば,ゲーム理論を使った投稿原稿を受け付けてくれますか,という形での質問をいただきます。

こういった疑問に関しても,バックナンバー確認により,ある程度の目安をつかむことが期待できます。あの計量手法を使った論文が載っているなあ,歴史史料をフルに使った論文があるなあ,語りの分析に則った研究だなあ,等々,バックナンバーをとおして確認できれば,自分の研究手法に関する不安を払拭でき,執筆にも集中できることと思います。

バックナンバーから確認できることの第3点目は,なんといっても,掲載に求められる水準でしょう。これは一番シビアな点かと思いますが,バックナンバーを眺めて,かなり歯ごたえのある研究がずらりと並んでいるという印象を受けるのか。それとも,思っていたよりも身近に感じられる,これぐらいだったら私でも書けそうだという印象を受けるのか。その実感は大事だと思います。

その実感を手がかりにして,掲載までの目標となる準備期間や戦略を設定できるでしょう。いまの自分の研究水準で掲載までもっていけそうだとなれば,1カ月で手持ちの論文を少しブラッシュアップして投稿しよう,という計画が成り立ちます。自分が想像していたよりも水準が高そうだとなれば,じっくり勉強して1年後ぐらいをめどに投稿しようと投稿戦略を練ることができるわけです。

『アジア経済』の採択率

掲載水準に関連して,『アジア経済』でどれぐらいの投稿があってどれぐらいが採択となっているかを紹介しておきたいと思います。(図1)をご覧ください。

図1  『アジア経済』での投稿受付数・採択数・採択率(2002~17年)

(出所)『アジア経済』編集部。

これと同じようなグラフは『アジア経済』のウェブサイトでも公開していますが,図1はそれよりも最近の2016年,2017年分の数字を加えてアップデートしたものです。棒グラフの長いほうが投稿受付数を,棒グラフの短いほうが投稿されたもののうち採択された数を示しています。グラフの左軸に目盛があります。そして,投稿数と採択数の比率を折れ線で示しています。これは右軸が目盛です。

これをご覧いただきますと,投稿数が大きく減少する傾向にあることがわかります――ぜひ投稿していただきたいというわれわれの思いの源はひとつにはこういうところにあるわけですが,それはさておき,ここで注目していただきたいのは,2005年のように年間100本を超える投稿が来たときでも,年間40本ぐらいの投稿数にある2014年頃でも,採択率はおおむね一定だということです。

2015年には採択率が大きく下がっていますが,この年は投稿数が20本程度と,それまでに比べて母数が大幅に少なくなったことにより,数値に偏りが出たとみてよいかと思っています。統計的な外れ値とお考えいただければよいかと思います。

2016年,2017年はまだ査読が進行中のものがありますので,最終的な採択率はこのグラフに示したよりも上がる可能性が高いです。となりますと,2016年,2017年もゆくゆくは4割程度の水準に収束するものと考えられます。総じて,『アジア経済』の採択率はおおむね4割程度の水準でほぼ一貫しているといってよいでしょう。

図1の補足として,全体の数字をご紹介いたしますと,図1の表がカバーしている2002~17年までの合計での投稿数は881本であり,採択数は323本です。全体での採択率は36.7パーセントとなります。やはり4割弱から4割ぐらいの採択率だということがここからもわかります。

この「4割」という数値を,みなさんどのようにお感じになるでしょうか。4割というのは5本に2本は採択されるという勘定です。十数倍に達するような難関というわけではないので,ジャーナルの運営側としては,ここはぜひともチャレンジに前向きになれる数値として受け止めていただきたいところです。難しいという印象をおもちの方もいらっしゃるかと思いますが,さほどばったばったと切り捨てているわけではないということを,この図から読み取っていただければと思います。

審査プロセスの全体像を把握しよう

それでは次に,「2.審査プロセスの全体像を把握しよう」という話題に移りましょう。査読付きジャーナルでの審査は一般的に次の4段階からなります。

①編集部での形式面の審査

②編集部・編集委員会の担当者による審査

③査読者による審査

④編集委員会による採否の決定

各段階について,『アジア経済』での場合を例にご説明いたします。

まず,①ですが,投稿原稿はメールで受け付けています。編集部宛に届いた原稿を編集部員が,投稿規定にきちんと適った分量や書式となっているかを確認します。問題がなければ受付となります。

投稿規定に適っていない箇所が見つかった場合には,編集部から投稿者に,ここを直してくださいとお願いをいたします。直ったものが提出されればそれで受付となります。この段階は形式が整っているかどうかを見るものですので,この段階で原稿が却下となることは基本的にはありません。

次の②が,編集部・編集委員会の担当者による審査です。まず編集部のなかの一人が投稿原稿を読ませていただきます。その論文がどのような論文かを中身に立ち入って把握するのが目的です。この作業は専門的には「素読み」とよばれます。私が編集部でおもに担当していたのがこの作業です。

素読み担当者は読み終わったら,投稿原稿のテーマ,分野,対象地域などを考慮して,編集委員のだれかお一人に投稿原稿を渡し,「プレレビュー」という作業をお願いします。プレレビューは,査読に回してよいかどうかを判定する審査です。査読に回してオーケーという判断が出れば,③の査読者による審査に移ります。

残念ながらプレレビューの結果が「ノー」,つまり査読に回さない,という判断となると,そこでその原稿は却下となります。このプレレビュー段階での却下についてはまたあとで説明することとして,まずは査読に回してよいとなったケースの次の手順について説明しましょう。

③の査読者による審査では,プレレビューを担当した編集委員が査読者の候補を挙げ,編集部が候補の方に打診と依頼を行います。査読者は2人が選任されます。査読者はアジア経済研究所の内外の方から選ばれます。アジア経済研究所の職員が当たることももちろんありますが,むしろどちらかといえば,日本の研究者コミュニティーを広く見渡していろいろ情報収集をしながら,一番適任だと思われる方に依頼し,お引き受けいただく形を取っています。

査読者には,『アジア経済』所定の審査項目にもとづいて投稿論文を検討していただきます。採用,条件付き採用,保留,不採用の4段階で判定を下していただきます。審査項目についてはのちほどくわしく説明いたします。

査読者からいただいた査読結果をもとに,④の編集委員会での採否の決定が行われます。査読者2人とも採用という判定となった場合,基本的には掲載決定となります。査読者2人とも不採用の場合,もしくは,お一人が保留で,もうお一人が不採用という組み合わせの場合には,返却となります。それ以外の判定の組み合わせの場合には,基本的には修正稿の提出を求めるという結論となります。

以上が査読の①~④の手順になります。

審査結果と審査期間

『アジア経済』での審査結果が,どのようなばらつきをとっているのかを具体的にご紹介しましょう(表1)。2017年には 20本の投稿がありました。これらが審査結果の最初の回答時にどのような判定であったかを見ますと,6本がプレレビューでの却下,6本が査読者による査読結果をふまえた返却,7本が修正稿の提出要求,1本が第3査読者を立てての査読継続となりました。このように,審査結果の最初の回答時 ――つまり,第1稿ということ ――に採用と判定された原稿はありませんでした。

表1  『アジア経済』での審査結果 (2017年の受付原稿分。最初の回答での結果)
審査結果該当本数
プレレビュー却下6
返却6
修正稿の提出7
第3査読者を立てて査読継続1
掲載決定0

(出所)『アジア経済』編集部。

私は『アジア経済』編集部を4年間担当させていただいていますが,この4年間をとおしてみても,審査結果の最初の回答時で掲載決定となった原稿は1本もありませんでした。2017年の事例では,最初の回答で「修正稿の提出要求」となった7本のうち2本が第2稿で採用となりましたが,これが実質的な最速ペースということになります。

つまり,1稿目で掲載決定になることは基本的にないものだと考えていただくのがよいと思います。1回,2回と査読者とのやりとりをとおして採用にもっていくというのが,基本的な流れになるとご理解ください。

投稿してから掲載までにどれぐらいの時間がかかるのか,という点もみなさんの関心事かと思います。掲載までの所要時間に関しては,審査にかかる時間だけがかかわるのではなく,修正稿・再修正稿を作成する加筆修正の期間があり,それもまた投稿者の事情に応じて様々ですので,一概にはいえません。そこで,ひとつの参考として,『アジア経済』での審査結果の最初の回答時までの日数をご紹介しておきます(表2)。

表2  『アジア経済』での結果通知までの日数 (原稿受付から最初の回答までの平均日数)
日数
201377.6
201483.2
201572.1
201678.4

(出所)『アジア経済』編集部。

2013~16年に本誌に投稿された原稿に対する,受付から最初の回答までの年ごとの平均日数は,72~83日ほどという幅に収まっているという数値が出ています。ここから,全体としては,最初の回答を受け取るまでの平均的な期間はだいたい2カ月半ぐらいだということがわかります。

第2稿(修正稿),第3稿(再修正稿)の場合ですと,素読みをしたり査読者を探したりする時間が生じませんので,提出から審査結果の回答までの期間はもっと短くなるのが一般的です。だいたい2カ月弱ぐらいがめどだといえるでしょう。

そうしますと,仮に再修正稿の審査までを行うケースでは,第1稿で2カ月半,第2稿で2カ月弱,第3稿で2カ月弱と計算して,審査に要する期間はだいたい半年ぐらいということになります。この期間に,投稿者の方が原稿を修正する時間を加えれば,投稿から掲載決定になるまでの時間の目安が得られると思います。修正稿,再修正稿の作成にそれぞれ1カ月ぐらい集中して取り組み,一気にブラッシュアップできれば,1年以内に掲載決定に到達することは十分可能だということです。

プレレビューではなにが見られているのか

では次に「3.査読者はどこを見ているのか」という話題に入りましょう。まずは,プレレビューについてです。『アジア経済』では,プレレビュー却下の判定基準を次の5項目に定めています(表3)。

表3  『アジア経済』でのプレレビュー却下の判定基準
1.扱っている対象地域・分野・時期が本誌に適さない
2.アジア経済』に該当する掲載ジャンルがない
3.日本語表現が内容の理解を妨げている
4.各ジャンルの原則に見合った構成になっていない
5.査読にかける水準に達していない

(出所)『アジア経済』編集部。

具体的に,この評価項目をどのように運用しているかをご説明します。これはほかのジャーナルでデスクリジェクトとなる条件や基準を考えるうえでの参考にもしていただけるかと思います。

まず,1番目の「扱っている対象地域・分野・時期が本誌に適さない」ですが,これはジャーナルの性格をきちんと把握したうえで執筆,投稿がなされているかを問う項目です。『アジア経済』の場合ですと,先ほど申し上げたとおり,発展途上国全体という広大な対象地域をもち,専門分野のカバレッジは広いわけですけれども,とはいっても,かなり時代を遡った時期――たとえば17世紀とか――を扱っているとか,先進諸国だけでの比較研究をしているといった原稿は,やはりジャーナルが掲げる対象範囲から外れてしまいます。この項目に該当する論文は,論文の水準以前の話として,ほかのジャーナルへの投稿をご検討ください,という意味での却下となります。

2番目の「『アジア経済』に該当する掲載ジャンルがない」という基準は,投稿原稿の書き物としてのタイプを問題にしています。例えば,論説文のような書き物,報告書のような書き物,概説書の一章のような趣で書かれたものなどがこれに該当します。内容的に学術的な意味をもってはいるわけですが,ジャーナル論文にはそれ相応の書きぶりがありますので,そこから外れるものを,この項目で却下とさせていただいています。

3番目の「日本語表現が内容の理解を妨げている」は,そのとおりの意味です。意味が伝わらない文章で記されているものの内容を理解することは,いかに有能な査読者であっても不可能なことです。ご投稿の際には,ぜひネイティブチェックをきちんと施されたものをお送りください。留学生の方でもたくみな日本語を書かれる方はたくさんいらっしゃいます。逆に日本語を母語とする方でも非常に読みにくい文章を書く方がいらっしゃいます。日本語の問題は,投稿者の方の国籍や出身地がどこであるかを問いません。研究仲間でも,指導教官でも,あるいはそれなりの費用はかかりますが校閲業者でも,どなたかの目できちんとチェックをしてもらった原稿を投稿してください。

4番目の「各ジャンルの原則に見合った構成になっていない」というのは,本や博士論文の一部を投稿する際によく起こりがちなケースです。問題設定や先行研究の整理を序章で行っていて,第3章の部分だけを投稿したいと思ったときなどに,第3章のところだけ読んでも論文のねらいや主旨がまったく説明されていないということが起こります。投稿原稿は,それだけを独立して読んだときでも,趣旨が不足なく査読者に伝わるように執筆されている必要があります。

それから5番目の「査読にかける水準に達していない」です。学部の卒論や修士論文の出来を褒められたり,自信をもったりしたので投稿にチャレンジしてみたのかな,とおぼしきケースがこれに該当します。

ジャーナル運営側としては,もちろん,どんどんチャレンジしていただきたい。大歓迎です。とはいえ,卒論・修論の場合には,テーマ選択,研究の進展,執筆に至るまで,指導教官や研究仲間との交流のヒストリーという特定の環境や文脈のなかで,成長したとか,一歩踏み出したとか,チャレンジしたとかが問われるケースもあるように思います。つまり,特定の前提のなかで執筆されている可能性があるということです。そのようにして書かれたものを,ぱっと,広い一般の研究コミュニティーに出したとしても,あまり価値あるものとして認めてもらえない,もらいにくいということが起こる可能性があるわけですね。

ですので,卒論・修論をベースに投稿をなさる場合は,自分が属していた研究室やゼミという環境を超えた広い学術コミュニティーに向けて原稿を出すのだということを意識して,自分の原稿に欠けているものの再検討をなさることをおすすめしたいと思います。

査読者の審査項目とは

次に,『アジア経済』での査読者による審査で使用している原稿検討票についてご紹介したいと思います。

原稿検討票には所定の様式がありまして,論題,要旨,目次などといった表書きと,概評 ――所定の7項目の選択式の審査項目 ――とで,だいたいA4の1ページぐらいになります。そのほかに評価の解説,「論文」以外の原稿区分が適当だと判定する場合の理由,加筆修正をする場合の提案事項なども,査読者に記入いただくことになっております。

書きぶりは査読者の方それぞれですが,問題点の指摘や修正に際してのコメントなどを親身にくわしく書いてくださる方が多いです。検討票はA4で3ページ程度になることが多いですが,なかには表現にわたって提案やサジェスチョンをしてくださる方もいて,このような場合にはA4で10ページぐらいになるときがあります。これを2人分もらえるわけですから,査読コメントから投稿者が得られる情報は膨大なものがあります。

概評欄の所定の7項目の選択式の審査項目についてくわしく見てみましょう(表4)。

表4  『アジア経済』の原稿検討票の「概評」の項目
① 論旨からみての題名の適合性(1.適合している2.適合していない3.保留)
② 問題設定(1.明確である2.不明確である3.保留)
③ 先行研究への理解(1.充分である2.不充分である3.保留)
④ 使われている資料の妥当性(1.妥当である2.妥当でない3.保留)
⑤ 従来の研究に比べての特色の有無(1.ある2.ない3.保留)
⑥ 論理の一貫性(1.一貫している2.一貫していない3.保留)
⑦ 記述の明快さ(1.明快である2.明快でない3.保留)

(出所)『アジア経済』編集部。

おのおのの項目は,読んでいただいたとおりで,とくにわかりにくいところはないかと思います。採用という判定に至った原稿は,基本的には,この7項目すべてが「1」と査読者から評価されてきます。例外的に,一部の項目が「3」のまま採用と判定されるケースはあります。例えば研究のオリジナリティーということ(この項目でいうと⑤)に関して,査読者ご本人ははっきり「ある」と確信をもてないけれど,総合的に見ればまとまった論文になっていると考えてよいはず,というような評価スタンスの場合です。とはいえ,これはやはり例外的なケースです。どれかひとつの項目でも「2」もしくは「3」があるうちは,採用という判定は出されないのが普通です。

ですから,投稿者の立場としては,これらの評価項目をきちんと把握して,ひとつひとつきちんと「1」になるような形でブラッシュアップを図っていけば,掲載決定に近づくのだと考えることができます。

厳しい評価が出される傾向がある項目について,補足説明をさせてください。

まず,1番目の「論旨からみての題名の適合性」です。これはひとつには,原稿の題名と内容の不一致の場合に該当する項目ですが,それだけではありません。漠然とした印象を与える論題である場合は,ジャーナル論文としての適合性が大いに欠けている場合が多く,そのような場合にもこの項目の評価が辛くなります。

例えば,私がコートジボワールの研究をしていますので,そこから仮の例を挙げますと,「コートジボワールの選挙制度について」といったような,たいへんざっくりした題名で原稿が投稿されてくるようなケースがあります。このような原稿の場合には,その中身はコートジボワールの選挙制度に関する情報があれこれと書かれていて,著者がなにかをいろいろ調べたことはわかるし,情報そのものには誤りはないのだけれど,原稿全体としては,なにを書きたかったのかがまったくわからない書き物となっている傾向があります。

中身がそのような状態であろうというのは,熟練した査読者の方なら,題名を見た瞬間にわかります。ざっくりした題名の論文は,論文の内容とある意味で「適合」しているのですが,だからといって完成度が高いわけでは決してないのですね。原稿をお書きになる場合には,題名だけで十分な内容があることを示せているか,かつ,実際に中身をともなっている論文となっているかどうか,じっくり検討してみることをおすすめいたします。

それから,2番目の「問題設定」に関してです。これは,書き出しの節である「はじめに」のできばえの問題として具体的に考えることができます。「はじめに」は,標準的にはA4の用紙で最初の1~2ページぐらいの分量になると思いますけれども,その箇所で,「本稿はこれについて論じます」というような簡単な言明しかないというケースが多々あります。しかし,それしか書かれていないようでは,査読者はその時点でもうその原稿の完成度に疑問符をつけると思います。

なぜ,それを論じるのか,論じることにどんな意義があるのか,論じ方としてどういう手順を取るのか,それによってなにを明らかにしようとするのか,というようなことが,「はじめに」では書かれている必要があります。そうでないと査読者は,本論をどう読み進めていいかわかりません。問題設定というのは,単にクエスチョンそのものを記載するだけでは不十分で,問いがどのような問いなのかが,ていねいな説明とともに提示されてはじめて成立するものといえます。そこがなされていないと,即座に不採用という評価をつけてくる査読者は結構います。

それから,今お話しした1点目,2点目よりはもう少し高い次元の話になりますが,5番目の「従来の研究に比べての特色の有無」に関してです。よく調べてくわしく書かれてはいるのだけれど,広がりや一般性のある知見が提示されていないことを重く見る査読者も多くいます。別の言い方をすると,研究のスコープがやや狭過ぎて,それを大きな視野で見たときに,どんな学術的なメッセージがあるのかが示せていないという問題です。だれも手をつけていないテーマを深掘りするタイプの研究が,このような観点からの評価で伸び悩む例がしばしば見られます。

また,自分がフィールド調査に行って20,30ぐらいのサンプルを取って,それにもとづいた分析をていねいにしてはいるけれども,それをとおして,いかなる母集団の話をしようとするのかがはっきり提示されていない,というタイプの研究も評価が伸び悩む傾向が見られます。自分が実際に見たり,経験したことに対しては真摯に取り組んでいるのですが,そこからどのような研究の広がりが展望できるのかについての検討が不足しがちというパターンです。このようなパターンでは,査読者から,そもそもなにを知りたくて調査をしにいったのかから考え直してみてください,というようなかなり厳しいコメントが来ることがあります。これはリサーチ・デザインそのものに立ち返る必要がある,深刻な問題といえるでしょう。

結果通知を受け取ったら

結果通知を受け取ったら,それから修正稿の提出を求められたら,どうするのがよいでしょうか。ここのところについても,簡単にアドバイス的なことを申し上げさせていただきたいと思います。

厳しい評価を受け取るのはだれにとってもつらいですね。私自身もつらい思いを何度もしています。査読結果を受け取ったあとに歯ぎしりして歯が欠けてしまったことがあります(笑)。いい年して40代にもなってなんでこんなことやっているんだとか思いますけれども,つらいのは,つらいわけですね。

ただ,査読は本気のコメントを受け取れる得難い機会です。それから,敵のように見えてしまうかもしれないですけれども,査読者,そしてジャーナルの運営側というのは,あくまで投稿者の利益になるようにということで,査読結果を作成し,通知しています。ぜひ,研究のステップアップのための手がかりにしていただけるといいなと思います。

さらに補足で申し上げますと,査読者から提出された査読票は,そのまま編集部をスルーして直接に投稿者の方に送られるわけではありません。『アジア経済』の場合ですと,提出されてきた査読票は編集委員が全員でその原文を見て,文章におかしなところはないか,誹謗中傷のような表現はないか,不適切な指摘はないか,投稿者に意味が伝わらない表現はないか,などといったことを,毎月の定例会議でていねいに精査しています。そのうえで,不適切なところを削除したり,表現を整えたり,査読者に問い合わせて真意を確認したりと,そういったプロセスを経て編集委員会として承認したものを投稿者にお送りしています。

投稿者と査読者とはけっして敵対している関係にはありません。編集部,編集委員会,査読者が一体となって,投稿してきた方に実のあるコメントをお返ししようという一心で仕事をしています。

ですから修正稿の提出をもし求められたとしたら,まずはコメントを熟読してください。そして,査読者がなにを問題視して,どんな改善を求めているのかをしっかり把握してください。それから改稿に臨むのがよいです。

その言わんとするところは,要は査読者と信頼関係を築こうということです。査読者との信頼関係を築くことができると論文の質は大きく高まります。そのためには,修正稿を出すときにコメントをいただいたことに関して必ずリプライをきちんと書きましょう。具体的には,修正稿を提出するときに,どのような修正を行ったかをまとめた指摘対応票という文書もあわせて提出することになりますが,そこでは,「ご査読ありがとうございました」から書き出し,ご指摘の1点目については,このように理解し,こういうふうに改善を図りましたというような形でのきちんとしたレターを書いてお返しするようにするのがよいです。こういう指摘対応票が戻ってくると,査読者も,やはり自分が直してほしいと思った意図がわかってもらえたわけですので,うれしく感じますし,張り切るものでして,修正稿に対してはさらに建設的なコメントやサジェスチョンが返ってきたりします。このような関係をぜひ確立して,大事にしていただきたいと思います。

逆に,査読者はちょっと踏み込んだ修正をしてほしいという趣旨のコメントを出したのにもかかわらず,ご指摘のところは表現を改めることで対応しました,というような形式的な対応でとどめてしまうと非常にリスキーです。こうなった場合,修正稿に対する査読コメントに「前の稿へのコメントでも書きましたが……」と同じコメントが繰り返されてくるようになります。

こうなってくると,査読者は,投稿者が学術的な流儀のなかできちんと議論をたたかわせながら高めるという態度が身についている人なのか,というところから疑念を抱くようになります。これは投稿者にとって大きな損失です。できれば査読者は味方,共同作業者だというぐらいの気持ちになって信頼関係をもっていただけるといいと思います。

投稿をお待ちしています

駆け足になりましたけれども,最後に締めとして,査読付きジャーナルは,あなたの投稿を待っています,と申し上げさせてください。

日本で刊行されている多くの人文科学,社会科学系のジャーナルは投稿不足に直面していますので,どこも投稿は大歓迎です。自分の能力と直面する勇気をもってチャレンジしてください。私が非常勤に行っている大学などで,よく学生さんがTOEICやTOEFLを受けなければいけないけれども,受けると点数がわかるから怖くて受けられないという,恐怖心を訴えてくることがあります。私も,自分が論文を投稿するときの気持ちと同じだなと思います。「おまえの研究ちょっといまいちだね」と言われるのはやはり怖いですけれども,そこは乗り越えていかないといけないチャレンジですね。

あとは,目標を設定して,計画とスケジュールを立てるところから始めてみましょう。さらにアイディアが浮かんだらゼミ,研究会,学会などで披露してどんどんコメントをもらいましょう。そうすると自分で気がつかなかったことについて,たくさんのコメントがもらえます。さらに原稿にまでまとめられたら,だれかに読んでもらいましょう。専門外の人でも全然構わないです。専門外の人は逆に「ここは意味が通じない文章だよ」ということを率直に言ってくれますので,研究内容のことだけでなく,文章の向上にとってとくに大きな意味をもちます。そういったところを大事にしていくと吉になるかと思います。

ちょっと時間を超過してしまいまして,最後は駆け足になってしまいましたけれども,私からは以上となります。どうもありがとうございました。(拍手)

 
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