アジア経済
Online ISSN : 2434-0537
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論文
  • 中川 雅彦
    原稿種別: 論文
    2024 年 65 巻 2 号 p. 2-21
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2024/06/28
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    本稿は,朝鮮民主主義人民共和国の兵器工業の発展過程と武力機関および兵器工業関連部門の企業による経済活動の拡大過程を示すことを通じて,従来充分な裏付けがなされてこなかった「軍事経済」論の有効性を検証するものである。兵器工業の発展に関しては,平壌での兵器工場の建設に始まり,それが朝鮮戦争時に分散疎開していくつかの工場になったこと,1960年代から兵器の高度化が進められたことが示された。とくに電子分野での武器の高度化においては熙川の電子工業の建設などで中国の協力が大きな役割を果たしていたことを指摘した。武力機関および兵器工業関連部門の企業による経済活動については,1970年代に軍隊での自給を目指す副業生産の拡大とは別個に輸出品を生産するようになったことが示された。さらに,近年,武力機関および兵器工業関連部門の企業が,従来行わなかった国内消費者向けの製品の生産やサービスの提供を始めるようになったことも指摘された。「軍事経済」論でいわれてきた武器生産体系と武力機関による国家計画外での経済活動の存在は兵器工場の建設状況,武力機関および兵器工業関連部門の貿易会社の組織状況によって確認された。

  • 松本 武祝
    原稿種別: 論文
    2024 年 65 巻 2 号 p. 22-52
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2024/06/28
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    水利組合事業は,植民地朝鮮の米穀増産政策の中核であった。本論文では,1916年に設立された全羅北道・古阜水利組合の組織運営に関して事例分析を行った。分析の結果,次の2点が明らかになった。第1に,組合長や評議員の選出過程において,少数の日本人資本法人・日本人の大地主からなる有力組合員が主導権を掌握していた。評議会においては,大地主でありかつ組合の債権者でもあった東洋拓殖会社およびその他大地主らが,自分たちの利害を背景に厳格な組合費徴収を主張してそれを制度化させた。第2に,水利組合の運営のために,職員による官僚制的分業体制が構築された。そして,幹線-支線水路の配水業務のための集権的な指示伝達システムが作動していた。総じて,古阜水利組合の組織運営は,中央集権的で官僚制的であった。ただし,集権的な配水システムは,末端小水路レベルでの受益農民による慣行的な配水によって補完されていた。

  • 秋田 朝美
    原稿種別: 論文
    2024 年 65 巻 2 号 p. 53-82
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2024/06/28
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    本稿は,中国の転換期,1937年7月7日の盧溝橋事件の勃発前後の時期を通じてアメリカ政府が中国に供与した借款の締結過程を再検討する。具体的には,35年4月の棉麦借款終了宣言前後から戦時期39年2月に正式に公表された2500万ドル借款(桐油借款)に至る中米交渉の推移を通じて,対物借款問題の連続性と変質を解明する。35年4月にアメリカの復興金融公社総裁が棉麦借款の終了宣言を公表したが,その後の中米間交渉でも棉麦借款の事後処理問題は議論され続け,2500万ドル借款の成立に影響を及ぼしていた。東アジアを取り巻くワシントン体制のもとで,国民政府はアメリカからの「借款」供与をどのように実現したのか。35年11月の中国幣制改革と中国への政治的経済的支援が一連の借款とどのようにつながっていたのか,2つの借款が有した歴史的意義とその影響を明らかにする。

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