アジア経済
Online ISSN : 2434-0537
Print ISSN : 0002-2942
研究ノート
タイ・軍事政権下の「コミュニティ林法」成立――「権利論」と「政策論」の視点からの分析――
藤田 渡
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2022 年 63 巻 1 号 p. 21-44

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抄録

2019年2月に,コミュニティ林法が成立し,関連する一連の法改正が行われた。これまで,人びとが日常的に生活に用いる森林資源を自ら管理することが法律上,許されず,国立公園などの保護林では,人びとが居住し耕作すること自体が違法とされてきた。今回の法改正によりこうした事態が一応,解決された。本稿では,コミュニティ林法を中心に,森林関連の法改正を,条文の規定やこれまでの経緯,審議過程も参照し,人びとの権利を承認するという立場を重視する「権利論」と,持続的な森林管理の手段として人びとの参加を認める「政策論」という観点から検証を行った。その結果,政府による統制が強く人びとを森林保護に動員するような「政策論」の極ともいえる内容であり,軍などによる強力な法執行を背景にしたものであることがわかった。政治情勢により,この法律が文言どおり執行されるかは不明だが,今後の経過を注意深く観察する必要がある。

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© 2022 日本貿易振興機構アジア経済研究所
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