抄録
症例の概要:患者は40歳女性,上顎前歯部の前突感と歯間離開による審美障害を主訴に来院.歯科補綴学的処置により下顎位を安定保持した上で,全顎的歯牙移動を行う補綴・矯正コンビネーション療法を行った.すなわち,動的矯正処置は,主に下顎臼歯部に固定性の暫間補綴装置を装着した状態で行った.
考察:可撤性あるいは固定性補綴装置を用いることにより,全顎的矯正治療中でも適正な下顎位を安定・保持することが可能となった.
結論:矯正と補綴を組み合わせた補綴・矯正コンビネーション療法は下顎位のコントロールの予知性が十分でないという矯正治療の欠点を補綴的治療が補うという点で有用な治療法であると考えられた.