目的:近年,ノンクラスプデンチャー(NCD)の臨床応用が拡大している.しかしながら,機能時にNCD が生体に及ぼす力学的影響に関しては,不明な点が多い.本研究はNCD装着時の支台歯および義歯床下粘膜部へ加わる荷重を静力学的に測定し,それらからNCDの生体力学的特徴を明らかにすることを目的とした.
方法:下顎第一小臼歯と第二大臼歯を支台歯とし,第二小臼歯と第一大臼歯が欠損している中間欠損歯列モデルを製作した.両支台歯内部には小型水晶圧電式センサを,また義歯床下粘膜相当部にはシート型触覚センサを設置した.実験用義歯は,材料がポリアミド–ナイロン系樹脂のみ(PA-NCD),ポリカーボネート系樹脂のみ(PC-NCD),支持・把持要素に金属フレームを用いたポリカーボネート系樹脂(mPCNCD),および一般的なアクリリックレジン製部分床義歯(PMMA-CD)の計4種類とした.実験用義歯の人工歯相当部に静的荷重(10,30,50,100 N)を段階的に負荷し,支台歯および義歯床下粘膜に加わる荷重を測定し,実験用義歯間で比較した.
結果:支台歯の歯軸方向に加わる荷重量は,義歯への負荷が50,100 Nの場合,PA-NCD とPC-NCDに比較してPMMA-CDにおいて有意に大きかった.義歯床下粘膜荷重は,負荷が50,100 Nの場合,mPCNCD,PMMA-CDに比較してPA-NCDにおいて有意に大きかった.
結論:NCDでは機能時に義歯床下粘膜に加わる負荷が従来の部分床義歯よりも過大になる可能性が示された
抄録全体を表示