日本補綴歯科学会誌
Online ISSN : 1883-6860
Print ISSN : 1883-4426
最新号
平成30年10月
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
特別企画
◆日本補綴歯科学会誌 特別企画 座談会
依頼論文
◆企画:エビデンス&オピニオン 第3回
  • 坂東 永一
    2018 年 10 巻 4 号 p. 290-295
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル 認証あり

     歯科では長年にわたり咬合面に下顎運動を妨害しない形態を求めていたが,顎機能制御系や主機能部位などについての研究が進み,咬合面形態が変化すればそれに応じて顎運動も変化することが明らかとなった.これには咬合負荷に対する反射が関係していると考えられるが,このような考えを持つに至った経緯を簡潔に紹介するとともに,顎口腔系が円滑に機能できるために必要な咬合をどのように与えるべきかについて,アンテリアガイダンスが失われている場合の咬合参照面の求め方と非咀嚼側大臼歯に付与すべき咬合について考えてみた.

◆企画:シリーズ/補綴医に贈る再生医療の話 第3回
  • 秋山 謙太郎, 窪木 拓男
    2018 年 10 巻 4 号 p. 296-301
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル 認証あり

     組織再生は,外的要因や疾患により破壊または喪失した組織構造がもとの通りに復元されることであり,その詳細なメカニズムの全貌は未だ解明されていないのが現状である.その理由として,組織再生には,未分化間葉系幹細胞の組織特異細胞への分化だけでなく,さまざまなサイトカインや免疫細胞などから構成される組織再生ニッチの形成が複雑に関与しているからと考えられている.本稿では,組織再生における間葉系幹細胞と免疫細胞の関わりについて,特に歯や補綴物の安定した予後に必要不可欠である骨の吸収,再生について,著者らのデータの一部と共に概要を紹介する.

◆企画:平成29年度九州支部専門医研修会「顎運動の再現と義歯の調整を咀嚼へ生かす」
  • 鱒見 進一
    2018 年 10 巻 4 号 p. 302-307
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル 認証あり

     補綴装置を製作する上で咬合器は必要不可欠なものである.咬合器は,歴史的には石膏咬合器に始まり蝶番咬合器,平均値咬合器,半調節性咬合器,全調節性咬合器へと先人達の努力により発展してきた.今日では半調節性咬合器が主流であると思われるが,依然として自由運動咬合器や平線咬合器が多く使用されているのが現状である.

     今回は,咬合器の使用目的,咬合器の基本的大きさと平均値咬合器,下顎運動の概要と咬合器への再現,顔弓計測法,ゴシックアーチの意義,チェックバイトと顆路調節,切歯路の再現などについて述べることとする.

  • 兒玉 直紀, 皆木 省吾
    2018 年 10 巻 4 号 p. 308-313
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル 認証あり

     超高齢社会においては,義歯関連治療の特徴的なニーズがある.すなわち高齢化や障害のために義歯への適応力が低下した患者であるにも関わらず,義歯調整であれば処置の即効性と永続性が,新義歯作製であればすぐに適応してくれる義歯の作製が望まれる.

     このような場面での義歯関連治療はシンプルにかつ高いレベルで行われる必要がある.総義歯患者が比較的若かった過去の時代と比較すると,患者年齢層高齢化に起因する口腔周囲筋群の巧緻性低下と食介護を想定した総義歯治療の新たな概念が必要とされている.このような背景に適合した義歯概念と診断法を適切に組み合わせれば,超高齢者の総義歯治療は論理的かつ確実に効果をあげることができる.

◆企画:平成29年度関西支部専門医研修会「高齢者に対するインプラント術後管理 -高齢社会における補綴学的留意点-」
  • 萩原 芳幸
    2018 年 10 巻 4 号 p. 314-321
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル 認証あり

     インプラント治療は歯科医院完結型を基本とし,通院可能な患者を対象として発展してきた.しかし,これは患者が常に健康かつ長期間通院することを前提としたもので,加齢変化の影響を過小評価し,現在直面している超高齢社会の実情に即応しているとは言い難い.臓器・疾患別医療から生活の質を支える医療へ転換を迎え,これからのインプラント治療は ①高齢者あるいは有病者に対してインプラント治療を施す場合,②インプラント治療後に年数を経て高齢期(有病化・介護化・超高齢化)へ突入した場合,の2つを念頭に置く必要がある.本総説では壮年後期から高齢期の患者に対する補綴(インプラント)治療における留意事項を解説する.

◆企画:平成29年度東北・北海道支部/生涯学習公開セミナー企画「補綴主導型インプラント治療 update −補綴主導型インプラント治療概念の変遷と今後−」
  • 関根 秀志
    2018 年 10 巻 4 号 p. 322-326
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル 認証あり

     超高齢化が進む本邦では,健康寿命の延伸が重要課題と認識されている.そのなかで,口腔の健康が全身状態に大きく影響していることについての報告が数多くなされてきている.特に,歯を喪失した後に,適切な咬合を回復することが全身的栄養状態や認知症の発症頻度,さらに生命の生存率に関わっていることなどが示されている.補綴歯科治療の重要性が明らかとなり,期待されている.

     われわれの日常生活と同様に,歯科医療の分野においてもデジタル化が急速に進んでいる.インプラント治療に関わるデジタル技術の開発と応用も同様に変化している.インプラント治療において,インプラント体埋入に関わる概念が顎骨主導型から補綴装置主導型に変容した.補綴装置主導型インプラント治療のワークフローはフィルム媒体をもちいたアナログ的手法からデジタル化した.歯科医療におけるコンピューター支援はさらにハイスピードで進んでいくものと考えられる.

原著論文
  • 馬場 一英, 津田 尚吾, 島 義人, 渡辺 崇文, 大楠 弘通, 宮嶋 隆一郎, 槙原 絵理, 鱒見 進一
    2018 年 10 巻 4 号 p. 327-334
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル 認証あり

    目的:日常臨床において,術者が患者に咬合を指示する際の言葉の違いにより患者の受け取り方が異なるため,術者の望む咬合状態を再現できない場合が見受けられる.本研究の目的は,3通りの咬合指示による咬合力および咬合接触面積を比較検討することにある.

    方法:顎運動機能に問題のない正常有歯顎者の被験者30名に対して,「お口を閉じて下さい」,「噛んで下さい」および「しっかり噛んで下さい」の3通りの言葉で咬合を指示した後,咬合力および咬合接触面積を測定し,比較検討した.

    結果:1. 咬合力は,「お口を閉じて下さい」,「噛んで下さい」,「しっかり噛んで下さい」の順に有意に増加し,「お口を閉じて下さい」と指示したときの咬合力を1とすると「噛んで下さい」では約2倍,「しっかり噛んで下さい」では約4 〜5倍であった.2. すべての咬合指示において男性の方が女性よりも咬合力が有意に大であった.3. 咬合接触面積は,「お口を閉じて下さい」,「噛んで下さい」,「しっかり噛んで下さい」の順に有意に増加し,「お口を閉じて下さい」と指示した際の咬合接触面積を1とすると,「噛んで下さい」では約2倍,「しっかり噛んで下さい」では約3倍であった.4. すべての咬合指示において対象者間のバラツキが大きかった.

    結論:術者が発する咬合指示の言葉のニュアンスは理解できているものの,果たしてどのくらいの咬合力で噛めばよいのかという解釈は,対象者により異なることがわかった.

技術紹介
  • 勝田 悠介, 山田 将博, 石橋 実, 奥山 弥生, 江草 宏
    2018 年 10 巻 4 号 p. 335-344
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル 認証あり

    目的:日本では高頻度の治療になりつつあるCAD/CAM冠であるが,歯学部におけるその教育システムは未だ確立途上である.東北大学歯学部では,平成28年度よりCAD/CAM冠治療の体系的な理解を目的とした模型実習を取り入れた.本稿では,その実習システムについて教育効果の考察を加えて紹介する.

    材料と方法:平成28年度4年次学生44名を対象に行ったクラウンブリッジ模型実習において,上顎左側第二小臼歯の支台歯形成,精密印象採得,作業用模型の製作・スキャン,パソコンを用いた冠の設計,ハイブリッドレジンブロックの切削加工を一連の実習として実施した.模型実習終了時に採点用ルーブリックを用いたCAD/CAM冠の支台歯形成技能評価を行った.一方,このCAD/CAM冠実習を経験していない同年度6年次学生50名を対象に同様の技能評価を行い,両群の結果について比較検討した.

    考察:4年次学生群の平均総得点数は6年次学生群と比較して有意に高かった.特に,咬合面の削除量,辺縁の連続性・幅・位置において,4年次学生群は6年次学生群より優れていたことから,学生自ら形成した支台歯を用いたCAD/CAM過程の経験は,支台歯形成技能の向上に寄与する可能性が示唆された.

    結論:本模型実習システムは,体系的なCAD/CAM冠治療ワークフローの理解を深めるとともに主体的な学修意欲を向上させ,良好な教育効果をもたらすと推測された.

専門医症例報告
  • 齊藤 裕美子
    2018 年 10 巻 4 号 p. 345-348
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:患者は58歳の男性.前歯部での咀嚼困難・審美不良を主訴に来院した.検査の結果,著しい咬耗および咬合支持域の喪失によって生じた低位咬合と診断した.

    考察:顎機能検査結果をもとに製作した可撤式オクルーザルスプリントで新たな顎間関係の設定,さらにプロビジョナルレストレーションを用い最終補綴装置設計の指針を検討しそれを反映させ,製作することで良好な経過を得ることができたと考えられる.

    結論:大きな下顎位の変化が生じた場合の,顎位決定には可逆的手法を選択し,プロビジョナルレストレーションの状態を最終補綴装置に反映しつつ,各ステップで機能評価をしたことで主訴を改善できたものと推察される.

  • 吉田 兼義
    2018 年 10 巻 4 号 p. 349-352
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:53歳男性.上顎左側口蓋部多形腺腫摘出術後の顎義歯製作のため,本学口腔外科より依頼され当科を受診した.上顎左側に鼻腔および上顎洞と交通する顎欠損が生じたため,支台装置としてコバルトクロム合金製連続ローチクラスプを採用した充実型栓塞子付き上顎顎義歯を製作した.顎義歯装着後1年7カ月経過時に支台装置破折が生じたため再製作を行った.

    考察:再製作した顎義歯は装着後4年以上経過したが支台歯に異常は認めず,支台歯に対する側方力のコントロールが良好であったと考えられる.

    結論:上顎顎義歯の支台装置として連続ローチクラスプを用いることは支台歯への影響を軽減し,顎義歯の長期安定に有効であった.

  • 荻野 崇真
    2018 年 10 巻 4 号 p. 353-356
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:76歳の女性.義歯床下粘膜の疼痛を主訴に来院した.すれ違い咬合であり,上顎残存歯が対合の義歯に強く咬合接触することで,下顎右側臼歯部義歯床下粘膜に疼痛が生じていた.上顎はオーバーデンチャーを,下顎はリンガルエプロンを大連結子とした部分床義歯を製作した.

    考察:上顎残存歯による下顎への加圧因子を除去し,下顎義歯の剛性の向上と沈下の軽減ができたため疼痛が消失し,良好な結果になったと考える.

    結論:すれ違い咬合症例に対して上顎をオーバーデンチャーとし,下顎義歯にリンガルエプロンを用いた部分床義歯を製作することで疼痛を抑制し,咀嚼機能,口腔関連QOLおよび満足度が向上した.

  • 小正 聡
    2018 年 10 巻 4 号 p. 357-360
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:患者は初診時69歳の女性.近医にて全顎的に著しい咬耗を指摘され,本科に来院.歯痛はないが,咬耗歯と補綴装置の審美的改善を長期にわたって変色や破折がない材料による補綴処置を希望された.全顎にわたる咬耗,骨隆起,補綴装置にマージンの不適合を認め,検査を行った結果,全顎的な咬耗症と診断した.

    考察:全顎的な咬耗に対してオクルーザルスプリントを用いて顎機能の安定を確立し,審美性と強度を兼ね備えたフルジルコニアのクラウンを利用することでその後の咬耗を防止することができた.

    結論:咬耗に対し適正な補綴処置を施すことで,咀嚼機能および審美障害を回復し,患者の満足を得ることができた.

  • 大河 貴久
    2018 年 10 巻 4 号 p. 361-364
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:患者は45歳の女性.1年前に装着した義歯での咀嚼困難を主訴に来院した.上顎は床後縁の設定を考慮し総義歯を,下顎は患者の舌感を考慮したテレスコープ義歯を用いることで咀嚼困難を改善し,口腔関連QOLも改善した.

    考察:上顎総義歯は,嘔吐反射を惹起しないポイントまで後縁を削合した.3年経過時においても経過は良好であるが,床の破折リスクを考えれば,補強線を口蓋床部に設定する予防的処置が可能であったと考える.咬耗による咬合関係の変化および粘膜面適合性については今後も慎重な経過観察が必要である.

    結論:本症例に対して,総義歯およびテレスコープ義歯によって咀嚼困難および口腔関連QOLを改善した.

  • 重光 竜二
    2018 年 10 巻 4 号 p. 365-368
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:患者は初診時57歳の男性.歯列の部分欠損と鋏状咬合を認め咬頭嵌合位の咬合接触は不安定であった.上顎にコンビネーションスプリント(残存歯列の咬合面全体を被覆した治療用義歯)を装着し咬合位の安定を図った後に最終補綴を行った.

    考察:フェイスボウトランスファーとクロスマウント法を用いて,コンビネーションスプリントを装着した状態での咬合要素を最終義歯へと反映した.これにより,咀嚼能率の向上と口腔関連QOL の改善が達成できた.

    結論:下顎位が不安定な症例では最終補綴に先立ち,治療用義歯により咬合支持の確立と咬合位の安定を図ることが重要である.

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