日本補綴歯科学会誌
Online ISSN : 1883-6860
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ISSN-L : 1883-4426
最新号
令和8年4月
選択された号の論文の20件中1~20を表示しています
巻頭言
依頼論文
◆企画:誌上ディベート 「クラウン・ブリッジにおける印象採得法:印象材による従来法 vs IOSによるデジタル法」
◆企画:誌上シンポジウム 「認知機能が低下した高齢患者に対する補綴治療の在り方―積極的治療と保守的対応の選択をどう考えるか―」
  • ―積極的治療と保守的対応の選択をどう考えるか―
    原田 佳枝
    原稿種別: 依頼論文
    2026 年18 巻2 号 p. 70
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/13
    ジャーナル 認証あり
  • 古屋 純一
    原稿種別: 依頼論文
    2026 年18 巻2 号 p. 71-77
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/13
    ジャーナル 認証あり

     認知症は高齢期に誰にでも生じうる進行性の症状であり,継続的な歯科受診やセルフケアが困難となる.本稿では認知症の特性と病型を概説し,ガイドラインと臨床経験をもとに補綴治療と口腔健康管理の要点を整理した.補綴治療は生活の楽しみを支援するための手段の一つにしかすぎないが,軽度認知症では予知性のある補綴治療を戦略的に行うことも検討したい.一方,中等度以降は「CureからCareへのシフトチェンジ」を行い,管理しやすい口腔にすることが重要である.また,義歯使用の利点とリスクを評価し,「入れ歯仕舞い」や「Comfort feeding only」を含めて,生活の楽しみを多面的に支援することが求められる.

  • 西 恭宏
    原稿種別: 依頼論文
    2026 年18 巻2 号 p. 78-83
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/13
    ジャーナル 認証あり

     認知症と軽度認知障害の高齢者は,高齢者全体の3割近くになるとされている.認知症高齢者はみずから外来受診をすることは少ないが,軽度認知障害や認知機能が遅からず低下していく外来患者はある程度存在するものと思われる.

     そのため,治療着手前に認知機能を把握するための評価が必要と考えられる.認知機能の低下が認められた場合は,侵襲的・長期的治療が困難であるかどうかを,患者本人だけでなく家族や代理人との合意が必要であるが,患者の不利益になる消極的な治療方針を選択するべきではないと思われる.また,認知機能が低下してからの歯科補綴治療は困難さが増すため,認知機能低下以前の歯科受診による口腔管理が必要である.

  • ~国際生活機能分類(ICF)の視点から~
    猪原 健
    原稿種別: 依頼論文
    2026 年18 巻2 号 p. 84-92
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/13
    ジャーナル 認証あり

     在宅歯科医療の現場において,補綴介入を行うべきか否かの判断は口腔内条件だけでは完結せず,生活の場,介護サービスと支援体制,本人の価値観などが重なり合う複雑な意思決定となる.そこで本稿は,クリティカル・シンキングの枠組みに基づき,検討すべき論点を漏れなく整理するフレームワークとして国際生活機能分類(ICF)を用いることを提案する.ICFは,心身機能・身体構造,活動,参加に加え,環境因子と個人因子を相互作用として捉える枠組みである.特に在宅では,「義歯を扱う・清掃する・保管する」といった日常管理が継続できるか,またそれを支える体制を確立できるかの検討が成否を左右する.さらにアウトカム(成功の定義)として,義歯の価値を「食べる」ことの回復に限らず,社会参加の回復としても評価する必要がある.一方で,義歯は装着自体が目的ではなく,生活機能の回復を支える手段である以上,補綴介入を行わない選択が妥当となる場合もある.その際も0か100かの二択にせず,段階的・条件付きの適用を含めて検討すべきであろう.また病期フェーズに応じた介入と再評価が必要であり,とくに回復期における「将来の生活期・在宅を見据えた攻めの介入」は重要な選択肢となる.ICFを用いてこれらの要素を体系的に整理することで,在宅療養者に対する補綴介入の可否判断における意思決定の質と説明力の向上に資することを期待する.

◆企画:第134回学術大会/シンポジウム10 「IRPD ─インプラントの併用は部分床義歯治療のゲームチェンジャーになるのか?─」
  • 黒嶋 伸一郎
    原稿種別: 依頼論文
    2026 年18 巻2 号 p. 93-100
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/13
    ジャーナル 認証あり

     我が国は超高齢社会のフロントランナーであり,インプラント治療戦略にはパラダイムシフトが希求されている.本依頼論文では,インプラントパーシャルデンチャー(Implant removable partial denture: IRPD)に関し,治療術式,インプラントまたはIRPDの成功率と残存率,辺縁骨吸収,機能,口腔関連QOL,患者満足度,インプラント埋入部位,荷重条件,義歯設計,アタッチメントの種類,生物学的・補綴学的併発症などの科学的現在地を調査した.その結果,2024年に出版された著者らのIRPDに関するスコーピングレビューとシステマティックレビューに近年の科学的情報を追加調査したものの,インプラントを応用したIRPD(埋入されたインプラントにヒーリングアバットメントを含むアタッチメントシステムを応用し,その上に義歯床が設置されるタイプのIARPDと,インプラント支持型サベイドクラウン/ブリッジを直接支台装置または間接支台装置としたIC/F-RPD)に関する明確な治療戦略を構築するための科学的情報は限定的であることが明らかとなった.IRPDは,天然歯,インプラント,義歯の三要素が共存する極めて複雑な口腔内環境を患者に提供するため,IRPDの臨床応用には十分に留意するとともに,最大限の知識と技術をもって治療提供を行うべきであろう.

  • 奥野 幾久
    原稿種別: 依頼論文
    2026 年18 巻2 号 p. 101-105
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/13
    ジャーナル 認証あり

     インプラントパーシャルデンチャー(implant removable partial denture: IRPD)は,従来の部分床義歯における支持性や安定性の問題を改善し得る治療法として注目されている.一方で,症例選択や治療戦略,インプラント埋入ポジションおよび補綴設計に関する明確な指針は十分に確立されていない.本稿では,IRPDを長期的に安定して機能させるためのポイントについて考察する.特に,IODへのソフトランディング,中間欠損化,既存インプラントを活用したリカバリー治療の三つの治療戦略を提示し,IRPDを可変的治療プロセスの一部として捉える視点の有用性を示した.

  • 佐藤 洋平, 井本 弘子, 鶴岡 淳
    原稿種別: 依頼論文
    2026 年18 巻2 号 p. 106-111
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/13
    ジャーナル 認証あり

     部分欠損症例に対する義歯臨床では,残存歯の存在により,残存歯と顎堤との被圧変位差ならびに残存歯による支台歯間線を軸とした義歯の回転変位が生じる.義歯の回転変位を抑制するため,これまでに多くの設計的工夫や臨床手技が考案されてきた.しかし,著しい義歯の回転変位を伴うすれ違い咬合やコンビネーションシンドロームでは,その制御はきわめて困難である.IRPDは,このような義歯難症例に対する有効な対処法の一つである.一方で,インプラントを応用した場合であっても回転変位を完全に消失させることは困難であり,また必ずしも理想的な部位に理想的な本数のインプラントを埋入できるとは限らない.したがって,埋入位置および支台装置の選択は慎重に行う必要がある.

◆企画:第134回学術大会/特別シンポジウム 「新たな時代に対応した無歯顎補綴臨床の展開」
  • 杉田 龍士郎
    原稿種別: 依頼論文
    2026 年18 巻2 号 p. 112-118
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/13
    ジャーナル 認証あり

     近年,無歯顎患者の高齢化および顎堤吸収の進行に伴い,従来の総義歯治療では十分な機能回復が困難な,いわゆる「難症例」が増加している.本稿では,無歯顎診断を単なる歯の欠損状態の把握としてではなく,口腔内の解剖学的条件から義歯に期待される機能,すなわち Anatomical Expectation の評価として再定義した.さらに,支持・把持・維持の三要素に基づく診査体系を整理し,患者の補綴装置に対する期待値との整合性を踏まえた補綴設計選択の在り方を提示する.加えて,conventional complete denture の機能的限界と,インプラント埋入による支持・把持・維持の強化が有効となる臨床状況について考察し,症例検討を通じて,conventional complete denture およびインプラント補綴の適応判断における診断的思考過程の重要性を示した.

  • 松田 謙一
    原稿種別: 依頼論文
    2026 年18 巻2 号 p. 119-123
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/13
    ジャーナル 認証あり

     近年,無歯顎患者数は減少する一方で,高齢化の進行や無歯顎期間の長期化に伴い,高度顎堤吸収などを呈する難症例の割合は増加している.さらに,全身的疾患や認知機能低下を併発する症例も多く,全部床義歯治療の難易度は年々高まっていると考えられる.本論文では,全部床義歯治療における難症例の特徴と,その背景にある要因を整理するとともに,なぜそのような症例の治療が困難となるのかについて考察する.続いて,高度顎堤吸収や顎位が不安定な症例に対し,機能性の高い義歯を製作するために重要となる考え方および,各臨床ステップにおける対応の要点について解説する.

  • 中居 伸行
    原稿種別: 依頼論文
    2026 年18 巻2 号 p. 124-130
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/13
    ジャーナル 認証あり

     無歯顎補綴のインプラント治療には,インプラントオーバーデンチャーと固定性インプラント義歯があげられる.それらの組み合わせや,適用ルールについてはいまだ一定の基準はない.近年,高齢者に対するインプラント治療の結果は,決して悪くないことが明らかになってきており,彼らに対してこうした事実も念頭に置き治療戦略を立てる必要がある.

     本論文では,高齢の無歯顎患者に対して従来型総義歯(CD)以外にインプラントを用いた補綴戦略,すなわちオーバーデンチャー(IOD)や固定性インプラント義歯(FIP)いわゆるAll-on Xを適用した症例を各種供覧し,その妥当性および限界を検討した.

◆企画:令和7年度/第1回専門医研修会 「顎顔面補綴」
  • 小野 高裕, 堀 一浩, 村上 和裕
    原稿種別: 依頼論文
    2026 年18 巻2 号 p. 131-136
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/13
    ジャーナル 認証あり

     顎顔面補綴治療の主たる対象である口腔腫瘍術後症例は,手術侵襲により複雑多様な口腔環境・機能の問題点を抱えている.補綴歯科医は顎口腔顔面組織の形態のみに目を奪われるのではなく,まず問題点を的確に把握したうえで,リハビリテーションに最も適した装置を選択・設計しなければならない.本稿では,まず上顎欠損症例と下顎(舌・口腔底部を含む)欠損症例に分けてそれぞれの問題点の特徴と診察におけるポイントについて解説する.次に,患者が自覚する問題点を把握するうえで有用な構造化された問診票を紹介する.

  • 口腔インプラントが顎補綴治療に及ぼす影響
    小山 重人
    原稿種別: 依頼論文
    2026 年18 巻2 号 p. 137-143
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/13
    ジャーナル 認証あり

     従来の顎補綴装置では機能回復が困難な顎欠損症例に対し,残存骨や再建骨に埋入したインプラントを顎補綴装置の維持・支持に利用する広範囲顎骨支持型装置・補綴は,有効な治療選択肢として確立されてきた.一方で,本治療は通常の口腔インプラント治療と比較して難易度が高く,良好な予後を得るためには,治療開始時から最終補綴装置および機能回復を見据えた補綴主導型の治療計画立案が不可欠である.また,顎骨再建やコメディカルを含めた医科歯科連携に基づく多職種チーム医療が医療成功の鍵となる.本稿では,顎補綴治療における広範囲顎骨支持型装置・補綴の適応と実践上の要点を整理し,補綴専門医に求められる役割について概説する.

◆二次出版企画:Journal of Prosthodontic Research/69巻2号 「Efficacy of initial conservative treatment options for temporomandibular disorders」
  • ―二次出版論文―
    西山 暁, 山口 賀大, 大井 一浩, 湯浅 秀道, 松香 芳三, 安部 貴大, 松田 慎平, 渡邊 友希, 鈴木 善貴, 柏木 美樹, 高 ...
    原稿種別: 依頼論文
    2026 年18 巻2 号 p. 144-155
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/13
    ジャーナル 認証あり

    本論文は,Journal of Prosthodontic Research の同名の出版物の翻訳を邦文論文として出版するものである.引用の際には原出版物の「Yamaguchi Y et al. J Prosthodont Res, 2025; 69(2): 173-180」を記載すること.

    目的:本ネットワークメタアナリシス(network meta-analysis: NMA)は,顎関節症(temporomandibular disorder: TMD)患者に対する有効な初期保存的治療戦略を同定することを目的として,ランダム化比較試験(randomized controlled trials: RCTs)を対象に実施した.

    研究選択:2000年1月から2021年7月までに発表されたTMD治療を比較したRCTを対象として,PubMedおよびEmbaseデータベースを用いた包括的電子検索を行った.疼痛関連TMD診断基準である Diagnostic Criteria for Temporomandibular Disorders(DC/TMD)およびResearch Diagnostic Criteria for Temporomandibular Disorders(RDC/TMD)に基づき,筋痛(myalgia)または関節痛(arthralgia)と診断された患者を対象とした研究を組み入れた.12種類の治療法およびプラセボを相互比較の対象とした.バイアスリスクはRisk of Bias 2.0を用いて評価した.各研究の直接比較に基づくフォレストプロットはMetaInsightを用いて作成し,NMAはR統計ソフトウェア(netmeta)により実施した.

    結果:疼痛を評価した24件のRCT(1,336例)および最大開口量(maximal mouth opening: MMO)を評価した12件のRCT(614例)が同定された.低出力レーザー療法(standardized mean difference[SMD]:−2.12,95%信頼区間[CI]:−3.18~−1.06),セルフエクササイズ(SMD:−1.51,95% CI:−2.82~−0.2),スタビリゼーションアプライアンス(St-A)(SMD:−1.16,95% CI:−2.02~−0.29)は,疼痛改善に有効であったが,エビデンスの確実性はいずれも極めて低かった.MMOの改善に関しては,セルフエクササイズ(SMD:0.71,95% CI:−0.58~2.01),St-A(SMD:0.65,95% CI:−0.09~1.39),低出力レーザー療法(SMD:0.63,95% CI:−0.34~1.6)が有効であったが,エビデンスの確実性はいずれも極めて低かった.

    結論:St-A,セルフエクササイズ,低出力レーザー療法は,TMDに対する初期治療として有効である可能性が示唆された.

専門医症例報告
  • 前芝 宗尚
    原稿種別: 症例報告
    2026 年18 巻2 号 p. 156-159
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/13
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:患者は76歳女性.下顎全部床義歯の維持不良による咀嚼困難を主訴に来院した.下顎は高度顎堤吸収,旧義歯はニュートラルゾーンへの設定不備による義歯の動揺が認められたため,フレンジテクニックを用いて新義歯を製作した.その際に,舌房の確保,機能性の回復を図った.

    考察:フレンジテクニックを用いてニュートラルゾーンの採得,また,咬合力を舌側化することで上下顎全部床義歯の安定を求めた.このことより主訴の改善が得られ,患者満足度の獲得と良好な経過に寄与したと考えられる.

    結論:フレンジテクニックを用いて下顎全部床義歯を製作し,患者の主訴を改善することができた.

  • 兒玉 匠平
    原稿種別: 症例報告
    2026 年18 巻2 号 p. 160-163
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/13
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:55歳の男性,齲蝕を主訴に来院した.5+5 に歯冠補綴装置の二次齲蝕を認め,3|3 は歯肉縁下齲蝕によりフェルールが喪失していた.そこで,3|3 の矯正的挺出によりフェルールを獲得し,プロビジョナルレストレーションによる検討を経てアンテリアガイダンスの再構築を行った.

    考察:矯正的挺出により不良となった歯冠歯根比への対応として,プロビジョナルレストレーションによって一次固定および咬合様式の検討を行い,適切なアンテリアガイダンスを設定したことで,咀嚼機能および審美的な回復が得られた.

    結論:重度の齲蝕を呈した 3|3 を保存し適切なアンテリアガイダンスを付与することで,良好な経過が得られた.

  • 尾立 哲郎
    原稿種別: 症例報告
    2026 年18 巻2 号 p. 164-167
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/13
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:患者は60歳女性.義歯を装着したがかみづらく,違和感があり長時間装着できないことを主訴として来院した.上顎は骨造成の後,インプラント埋入を行い,フルアーチインプラントブリッジによる補綴装置を,下顎は固定性ブリッジおよび可撤性部分床義歯を装着した.

    考察:上顎では調整を行ったプロビジョナルレストレーションの形態を最終上部構造に反映させたこと,下顎では残存歯を可能な限り義歯の安定に用いたことで良好な経過を得ることができたと考える.

    結論:上顎はフルアーチインプラントブリッジを,下顎は固定性ブリッジおよび可撤性部分床義歯による補綴治療を行うことで,良好な予後が得られた.

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