日本補綴歯科学会誌
Online ISSN : 1883-6860
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ISSN-L : 1883-4426
最新号
令和8年7月
選択された号の論文の23件中1~23を表示しています
巻頭言
特別企画 日本補綴歯科学会100周年に向けて 先達に聞く
依頼論文
◆企画:誌上シンポジウム「舌接触補助床(PAP)と栄養:口腔機能と食支援の最前線」
  • 吉川 峰加
    原稿種別: 依頼論文
    2026 年18 巻3 号 p. 191-194
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/18
    ジャーナル 認証あり

     近年,高齢者において口腔機能低下と栄養状態は密接に関連し,咀嚼困難や嚥下障害が低栄養やフレイルを助長することが指摘されている.舌接触補助床(PAP)は摂食嚥下機能の改善に有効とされるが,栄養学的アウトカムとの関連を検証した研究は乏しい.これまでに,多職種連携による機能改善例や,舌圧・嚥下指標の改善に関する報告はあるものの,体重や摂取量,血液指標など栄養評価は十分ではない.高齢者では多因子が栄養に影響するため因果関係の解明は容易ではないが,今後は栄養指標を含む前向き研究と適応患者の明確化が求められる.本企画では,補綴歯科,栄養学,嚥下リハビリテーションの専門家が知見を共有し,統合的介入としての口腔機能支援の可能性を議論する.

  • 藤谷 順子
    原稿種別: 依頼論文
    2026 年18 巻3 号 p. 195-200
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/18
    ジャーナル 認証あり

     超高齢社会において,嚥下障害,誤嚥性肺炎,低栄養は相互に関連しながら進行する重要な健康課題である.高齢者では嚥下機能低下の有病率が高く,その進行に伴い誤嚥性肺炎の発症リスクが増大する.また低栄養は免疫低下や筋力低下を招き,嚥下機能の更なる悪化やサルコペニアを介して悪循環を形成する.特に咀嚼機能の低下は,タンパク質摂取不足や食事量減少を引き起こし,低栄養の進行に寄与する.したがって歯科領域においては,単なる咬合回復にとどまらず,「十分に食べられる能力」の評価と早期介入が重要である.食事内容や体重変化への着目,義歯の適切な使用指導ならびに医科・栄養分野との連携により,低栄養と嚥下障害の悪循環を断ち切ることが求められる.これらの包括的介入により,高齢者の健康寿命の延伸,QOL向上と「最期まで口から食べる」社会の実現が期待される.

  • 栢下 淳
    原稿種別: 依頼論文
    2026 年18 巻3 号 p. 201-205
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/18
    ジャーナル 認証あり

     高齢者における嚥下障害と低栄養の関連およびその対策について概説する.高齢者の栄養状態は予後に強く影響を及ぼす.特に嚥下障害を有する者では,その半数以上に低栄養が認められ,栄養不良は視覚的評価だと見落とされやすいことが明らかとなっている.低栄養リスク評価ツールであるMNA-SFは簡便かつ感度の高い評価法として有用であり,早期からのアプローチが重要である.さらに,禁食はエネルギー不足を招き低栄養を助長するため,可能な限り経口摂取を選択すべきである.筋タンパク合成能に関しては,若年者と比べて高齢者で低下することから,1食あたり約20 gのタンパク質摂取,特に朝食での積極的な摂取が推奨される.高齢者の体重増加には,エネルギー付加が必要であり,MCTオイルなどの活用が有効である.摂食嚥下障害患者に提供されることの多い嚥下調整食は,栄養の密度が低下しやすい点に注意が必要であり,栄養補助食品の併用が現実的である.高齢者では常食摂取を継続するには,舌圧や身体機能の維持は重要であり,低栄養予防には多面的介入が求められる.

  • 堀 一浩
    原稿種別: 依頼論文
    2026 年18 巻3 号 p. 206-211
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/18
    ジャーナル 認証あり

     口腔機能低下は,問診や会話,視診など日常診療のなかでの微細な変化からでも把握可能であり,「硬いものが食べられない」「食事に時間がかかる」といった訴えや,嚥下時の異常,口腔内の清掃不良,発音や声質の変化などが重要な手がかりとなる.これらを踏まえ,必要に応じてさまざまな口腔機能評価を行い,早期発見につなげることが求められる.対応としては,補綴装置による形態および機能回復を基盤としつつ,患者の全身状態や生活背景に配慮した設計と使用支援が重要である.さらに,多職種連携を通じて,口から食べる機能の維持・向上を図ることが,超高齢社会における補綴歯科医の重要な役割である.

  • ~PAP治療を軸とする経口摂取の重要性~
    大野 友久
    原稿種別: 依頼論文
    2026 年18 巻3 号 p. 212-218
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/18
    ジャーナル 認証あり

     舌接触補助床(PAP)は口蓋部を厚くし,舌と口蓋部の接触や舌運動を補助することで,食塊の咽頭への送り込みを改善し,摂食時間短縮や舌圧向上,咽頭残留の減少などの効果をもたらす.舌癌術後や脳血管障害,神経筋疾患,サルコペニアなどによる舌運動不全に対して適用される.症例に応じて軽量化やLingual Augmentation Prosthesisとの併用などの工夫が必要な場合もある.また,鼻咽腔閉鎖不全と嚥下障害の同時改善目的での軟口蓋挙上装置(PLP)とPAPの複合型装置や,経口で栄養チューブを間歇的に挿入する栄養法であるOE法を支援する口腔内装置などもあり,義歯を含めさまざまな口腔内装置が摂食嚥下リハビリテーションに貢献することが可能である.これらの装置は,歯や咀嚼機能を補うだけではなく「口腔内で食塊を適切に移動させることを補う」ものであり,歯科医師の専門性が発揮される領域である.病院内で摂食嚥下リハビリテーションが行われることも多く,病院における補綴のニードは実は大きい.特に回復期はニードが大きく,多機関での調査で義歯治療や嚥下リハビリテーションへの関与実績が多かった.多職種連携のなかで,補綴が嚥下機能改善に果たす役割は少なくない.

◆企画:「咬合違和感症候群(ODS)の診断と治療法に関する臨床指針」
◆企画:補綴臨床家が知っておくべき国際規格の基礎知識
  • 村田 比呂司
    原稿種別: 依頼論文
    2026 年18 巻3 号 p. 227-234
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/18
    ジャーナル 認証あり

     ISO規格は電気・電子,通信・ネットワーク関係以外の工業・サービス分野の規格を担当する国際規格の一つで,現在300以上の技術委員会(TC)が存在する.そのうちTC106が歯科専門委員会で,i)用語,定義,ii)歯科製品の要求事項,安全性,iii)試験方法を含む口腔保健に関する標準化が適用範囲である.ISO規格に適合した医療機器(歯科材料も含む)は,歯科医療従事者と患者に,安心,安全,そして上質な医療をもたらす.そのためには,製品を正しく使用することが必須である.また日本製品の海外市場への拡大には,日本が作業グループ(WG)のコンビーナを獲得するなど,国際規格にJISなどの日本の考え方を反映させることが重要である.

◆企画:第10回補綴歯科臨床研鑽会「プロソ’25」/臨床セミナー2 「義歯設計教育におけるリジッドサポート」
  • 欠損歯列の病態から適応症を考える
    都築 尊, 前芝 宗尚, 北條 朋子
    原稿種別: 依頼論文
    2026 年18 巻3 号 p. 235-240
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/18
    ジャーナル 認証あり

     本稿では,部分床義歯設計におけるリジッドサポートの適応について,症例を通して検討した.特に咬合三角第4エリアに属する症例では,支台歯数および咬合支持が少ない一方で床面積を広く確保できるため,加圧要素と受圧要素のバランスが良好となり,リジッドサポートの効果が高く発揮される傾向が認められた.一方,すれ違い咬合や強い咬合力を有する症例では,支台装置の脱離や維持力低下などのトラブルが生じやすく,対症的対応を要した.また,第2エリアの症例では,欠損形態が類似していても,咬合力の方向や支台歯配置により予後に差が認められた.これらの結果から,リジッドサポートの適応に際しては,支台歯の歯軸方向への咬合力の制御が重要であり,咬合支持だけでなく力の方向性を考慮した設計が求められると考えられた.

◆企画:令和7年度関越支部学術大会/生涯学習公開セミナー「補綴歯科治療の潮流 ―材料と臨床の観点から―」
  • 五十嵐 健輔
    原稿種別: 依頼論文
    2026 年18 巻3 号 p. 241-247
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/18
    ジャーナル 認証あり

     補綴歯科治療の成功には,機能性および審美性の回復が不可欠であり,その達成には適切な材料選択が重要である.機能面では,口腔内において咬合力に耐えうる十分な機械的強度が求められる.一方,審美面では,隣接歯および周囲軟組織との調和が重要となる.歯科治療に用いられる材料は,有機材料,無機材料,金属材料,ならびに複合材料に大別される.歯科医師はそれぞれの材料特性を十分に理解し,症例に応じた適切な材料選択を行う必要がある.

     本稿が,歯科材料の基礎的事項を再確認し,今後の治療に用いる材料を検討するきっかけとなれば幸いである.

  • 海渡 智義
    原稿種別: 依頼論文
    2026 年18 巻3 号 p. 248-255
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/18
    ジャーナル 認証あり

     臼歯部の新しい歯冠修復形態として,オクルーザルベニアが注目されている.これは,咬合面を一層削除した支台歯に,高強度材料を接着し置換することで,実質欠損とともに咬合関係を回復し,長期に維持させることを目的とした修復物である.咬合面の大きな実質欠損症例や,Tooth Wearによる損傷歯,咬合関係の改善が必要な症例などで適応され,良好な経過を示している.この臼歯部ベニア修復の臨床要件には,修復物や,接着,支台歯形態に関する事項があるが,それらと関連して,最終修復物の形態を口腔内で検討する作業も重要と思われる.本稿では,オクルーザルベニアを臨床で用いるにあたって重要と思われる要件とポイントについて解説を行った.

◆企画:令和7年度九州支部学術大会/招待講演「細胞移植による顎骨再生治療法の開発」
  • 末廣 史雄
    原稿種別: 依頼論文
    2026 年18 巻3 号 p. 256-261
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/18
    ジャーナル 認証あり

     歯を失った患者にとってインプラントは有効な治療法だが,骨量が不足する患者に対する骨再生治療のゴールドスタンダードとされる自家骨移植は患者への侵襲が大きい.そのようななかで細胞と骨補塡材の組み合わせによる顎骨再生治療法は,次世代の骨再生治療法として期待されている.さまざまな組織由来の細胞を用いた骨再生研究が広く行われているなかで,我々は顎骨骨髄由来間葉系間質細胞の自家移植による顎骨再生治療法の開発を目指している.本論文では細胞の採取から移植体(骨再生剤)の製作まで一連の治療の流れを想定して行ってきた研究の結果を示すとともに,歯科領域における骨再生医療の現状について理解を深める機会を提供したい.

◆企画:令和7年度東北・北海道支部学術大会/シンポジウム「デジタルデンティストリーのパーシャルデンチャーへの応用」
  • ―臨床と研究の現場から―
    田坂 彰規
    原稿種別: 依頼論文
    2026 年18 巻3 号 p. 262-268
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/18
    ジャーナル 認証あり

     令和7年12月に3次元プリント有床義歯が保険収載され,CAD/CAM技術は有床義歯補綴分野にも普及しつつある.また,パーシャルデンチャーにおいても,すべての構成要素をCAD/CAM技術で製作することが可能となってきた.一方,口腔内スキャナーについては,部分歯列欠損症例では顎堤粘膜に対する機能印象が必要となるため,実用化には至っていないのが現状である.本稿では,当講座においてこれまで実施してきたCAD/CAM技術を応用したパーシャルデンチャーに関する研究および臨床の取り組みを整理し,デジタルデンティストリーのパーシャルデンチャーへの応用の現状と今後の課題について考察する.

◆二次出版企画:Journal of Prosthodontic Research/68巻2号
  • ―二次出版論文―
    奥野 健太郎, 王 麗欽, Almeida Fernanda R.
    原稿種別: 依頼論文
    2026 年18 巻3 号 p. 269-281
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/18
    ジャーナル 認証あり

    本論文は,Journal of Prosthodontic Research の同名の出版物の翻訳を邦文論文として出版するものである.引用の際には原出版物の「Okuno K et al. J Prosthodont Res, 2024; 68(2): 227-236」を記載すること.

     高齢者の歯科睡眠医学について,睡眠生理,睡眠障害,閉塞性睡眠時無呼吸とその管理について解説する.睡眠障害は高齢者でより頻繁に起こる.加齢に伴う睡眠生理学の変化により,高齢者では不眠症の有病率が増加する.閉塞性睡眠時無呼吸は高齢者に多くみられ,その影響は若年者よりも大きい.高齢者には睡眠の質に影響を及ぼす合併症があるため,これら合併症の睡眠生理学および睡眠障害への影響を考慮する必要がある.閉塞性睡眠時無呼吸は生活の質を低下させ,他の疾患の発症リスクを高める可能性がある.口腔内装置治療を適応する際には,リスクとベネフィットについて患者に伝える必要がある.

◆二次出版企画:Journal of Prosthodontic Research/68巻4号
  • ―二次出版論文―
    岩崎 正則, 佐藤 美寿々, 高橋 大郎, 山本 貴文
    原稿種別: 依頼論文
    2026 年18 巻3 号 p. 282-290
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/18
    ジャーナル 認証あり

    本論文は,Journal of Prosthodontic Researchの同名の出版物の翻訳を邦文論文として出版するものである.引用の際には原出版物の“Iwasaki M et al. J Prosthodont Res, 2024; 68(4): 643-649”を記載すること.

    目的:日本人中高年者における機能歯数と食事性炎症指数(DII)との関連を検討すること.

    方法:2016年国民健康・栄養調査および歯科疾患実態調査に参加した45歳以上2,407名を対象とした.年齢階級別にDIIを目的変数,機能歯数を説明変数とする重回帰分析を行った.

    結果:75歳以上の群において,機能歯数はDIIと有意な負の関連を示した(機能歯数1歯増加ごとの回帰係数=−0.048:95%信頼区間=−0.087~−0.009)が,45–74歳では関連は認められなかった.

    結論:75歳以上の日本人において,機能歯数の維持は抗炎症性の食事摂取と関連することが示唆された.

◆二次出版企画:Journal of Prosthodontic Research/69巻1号
  • ―二次出版論文―
    荒井 良明, 高嶋 真樹子, 松﨑 奈々香, 高田 翔
    原稿種別: 依頼論文
    2026 年18 巻3 号 p. 291-302
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/18
    ジャーナル 認証あり

    本論文は,Journal of Prosthodontic Research の同名の出版物の翻訳を邦文論文として出版するものである.引用の際には原出版物の「Arai Y et al. J Prosthodont Res, 2025; 69(1): 12-20」を記載すること.

    目的:辺縁骨吸収(marginal bone loss:MBL)は,歯科インプラントの埋入およびアバットメント連結後,インプラント頸部周囲骨に生じる.MBLは必ずしもインプラント周囲炎を引き起こすわけではないが,インプラント周囲炎には必ずMBLを伴う.近年の研究において早期MBLがインプラント周囲炎の予測因子であることが示されている.本ナラティブレビューでは,臨床医がMBLを予防するために推奨される治療戦略について,エビデンスに基づいた指針を提供することを目的とした.

    研究の選択:インプラント周囲も辺縁骨吸収に関する既存の系統的レビューおよびメタ解析に焦点を当て,最新の文献をレビューし,エビデンスのナラティブ統合を行った.

    結果:得られたエビデンスは,特定の生物学的,材料学的,および技術的因子がMBLに影響を及ぼし,その結果として将来的なインプラント周囲疾患の発症リスクを左右することを示している.各因子の影響力の強さの順位は不明である.MBL予防のための現在の推奨事項には,手術前および生涯にわたる患者の喫煙習慣とヘモグロビンA1c値を十分低いレベルにコントロールすることが挙げられる.材料に関しては,プラットフォームスイッチングおよびコニカル接続を採用したインプラントシステム,ならびに2 mm以上の高さを有するアバットメントを選択すべきである.埋入時には,十分な軟組織(角化歯肉幅2 mm以上,軟組織の高さ 3 mm以上)を確保できる手技を用いるべきであり,皮質骨においてアンダーサイズとならない形成を行い,一次または二次手術の際にコンケーブ形態のアバットメントを連結すべきである.また,メインテナンス期間中,患者はインプラント支持療法を受けるべきである.

    結論:MBLの発生は多因子性であり,生物学的,材料学的,および技術的因子を考慮することで抑制可能である.

原著論文
  • 山下 小依花, 古玉 明日香, 野川 敏史, 今田 瑠偉, 高山 芳幸, 横山 敦郎, 坂口 究
    原稿種別: 原著
    2026 年18 巻3 号 p. 303-312
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/18
    ジャーナル 認証あり

    目的:間接法で製作されたファイバーポストを用いたレジンコア(FC)とメタルコア(MC)の生存率と成功率に影響する因子を探索した.

    方法:北海道大学病院の患者を対象に,FC群とMC群について前向きコホート研究を行った.生存時間分析にはKaplan-Meier法とLog-rank検定を用いた.残存歯質量,最終補綴装置等を含む複数の因子について情報を収集し,Cox比例ハザードモデルを用いて解析した.残存歯質量のカットオフ値はROC曲線分析により決定した.

    結果:FC(199歯)とMC(34歯)計233歯を対象とした.支台築造体装着から5年後の生存率および成功率には両群間の有意差は認められなかった.残存歯質の高さの最大値(MaxH)と補綴装置の材質の弾性率が生存率および成功率の予後に独立して有意な影響を与える因子と同定された.特にMaxHが生存率で2.0 mm以下,成功率で2.5 mm以下の症例,および弾性率が低い材質のクラウンを用いた症例で予後が悪化した.

    考察:MaxHが一定の基準を上回ることで,築造体への応力集中が緩和され,脱離や破折等のリスクが大幅に低減されたと考えられる.また,金属やジルコニア等の弾性率の高い材質を用いたクラウンは,硬質レジン等の弾性率の低い材質のものと比較して,咬合力を受けた際の歯根への過度な応力伝達を抑制したと考えられる.

    結論:FCとMCの5年経過時点での予後には差がない可能性が示された.築造体の良好な予後を得るには,2.5 mmより高いMaxHの確保と高い弾性率を有する歯冠補綴装置が重要であると示唆された.

症例報告
  • 玉置 勝司, 高橋 美保, 和智 遥香, 島田 淳, 渡辺 秀司, 和気 裕之
    原稿種別: 症例報告
    2026 年18 巻3 号 p. 313-318
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/18
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:58歳,男性.主訴は左下第二大臼歯に対する根管治療後のクラウン装着時に出現した咬合違和感と舌側縁の痛み.医療面接・診察・検査から,咬合違和感症候群(ODS)Ⅲ型と診断し,ケース・フォーミュレーション(CF)を行い機能分析した.患者対応と治療の結果,2か月で患者との信頼関係が構築され,患者の満足度も得られ,自覚症状が大幅に改善した.今回はこのCFを自然な対話形式で,短時間で済む質問項目にし,患者自身の回答から整理する問診票「簡易CF票」を作成した.簡易CF票は,CFの重要な三つのファクター①先行刺激,②反応,③結果を簡単に聴取でき,それに基づく機能分析(維持要因)が導きやすくなるように工夫を加えた.最後に,本患者のCFを基に簡易CF票にシミュレーションし,医療現場での実用可能性について検討した.

    考察:この簡易CF票により,患者の解釈モデルが明確になり,心理的アセスメントの一助となり,更に寄与因子の歯科的因子と修飾因子を機能分析できる可能性が示唆される.また,現場での活用により,より精緻化した患者の心理的アセスメントができるだけでなく,問診時のコミュニケーションを通して患者との関係性の構築にも寄与することが期待される.

    結論:CF作成を問診形式の簡易CF票にすることで,一般歯科臨床においてODS患者の心理学的な問題点が明確になり,対応と治療に活用できる可能性が示唆された.

専門医症例報告
  • 宮園 祥爾
    原稿種別: 症例報告
    2026 年18 巻3 号 p. 319-322
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/18
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:患者は72歳の女性.審美不良と咀嚼困難を主訴に来院した.低位咬合と臼歯部欠損による審美障害および咀嚼障害と診断した.歯冠補綴装置と部分床義歯を用いて咬合挙上を伴う補綴歯科治療を行った.

    考察:診断用ワックスアップを行い,プロビジョナルレストレーションで顎間関係を模索し,咬合と審美性に問題ないことを確認した.この形態を最終補綴装置に反映することで,咀嚼機能および審美性ともに患者の高い満足度が得られたと考える.

    結論:低位咬合と臼歯部欠損による審美・咀嚼障害の症例に対して咬合挙上を伴う咬合再構成を行った結果,審美性と咀嚼機能の良好な回復を得ることができた.

  • 前田 正名
    原稿種別: 症例報告
    2026 年18 巻3 号 p. 323-326
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/18
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:患者は64歳の女性.上顎ブリッジの揺れによる食事のしづらさを主訴に当科初診となった.支台装置の一部脱離および支台歯の二次齲蝕と動揺を認めたため,二次齲蝕,動揺および支台装置脱離による固定性ブリッジの不備に起因する咀嚼障害と診断した.保存困難な歯の抜歯後は,片側遊離端欠損部の早期機能回復を目的に部分床義歯を製作し,最終的にはインプラントによる治療を行った.

    考察:インプラント治療により,咀嚼機能の定量的評価で良好な結果が得られ,口腔内異物感が改善することで食事の質の向上につながったと考えられた.

    結論:片側遊離端欠損のインプラント治療により咀嚼機能と口腔関連QOLを改善することができた.

  • 杉本 皓
    原稿種別: 症例報告
    2026 年18 巻3 号 p. 327-330
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/18
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:患者は73歳女性で,咀嚼困難を主訴に来院した.顎関節の変形に起因する開咬と下顎位の不安定性を認めたため,オーラルアプライアンス(以下OA)により均等な咬合接触を付与して下顎位の安定化を図り,最終補綴物に咬合面に金属歯を用いたOAを適用することで機能回復を達成した.

    考察:本症例では,OAにより適切な下顎位を決定し,最終的に強度面において咬合面形態の安定を図りやすい金属歯を用いたOAを選択したことで,咬合接触の長期安定と機能回復が得られたと考える.

    結論:変形性顎関節症に伴う開咬に起因する咀嚼障害に対して,金属歯を用いたOAによる機能回復により高い患者満足度が得られた.

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