抄録
健常者を主な対象にしてきたこれまでの歯科医療では,麻痺や廃用などにより口腔機能が障害されている患者があまり存在しなかったため,咀嚼運動における歯の有無だけが注目されてきた.さらに,嚥下できるかどうかを考えて歯科治療を行うこともなかった.しかしながら,超高齢社会のなかで要支援,要介護高齢者を診る機会が増え,さらに歯科訪問診療という新たな使命が課せられた今日,このような口腔機能,摂食嚥下機能の低下した高齢者を診る必要性が出てきた.このような超高齢者に対する補綴歯科治療がどうあるべきか,これまでの臨床や研究を通じて考えてきたことをまとめてみたい.