2025 年 4 巻 2 号 p. 512-525
本稿は、日本における質的研究法の発展を踏まえ、混合研究法の今後の展望を検討するものである。筆者は育児期の母親を対象とした研究において、自由記述の質的分析から尺度を作成し、量的調査で検証するという一連の過程を経験した。この実践は、混合研究法の探索的順次デザインとして理解できる。その後、量的変数による人間理解に限界を感じたことから、批判的・歴史的研究に転じ、ついには新しい質的研究法である複線径路等至性アプローチ(Trajectory Equifinality Approach: TEA)を開発した。TEAは、人生径路を「非可逆的時間」と「実現したことー実現しなかったこと」の二軸で描き、複数の到達径路や社会的影響を可視化する方法である。本稿では、混合研究法において新参者であるTEAに焦点を当て、探索的順次、説明的順次、収斂型の各デザインにおいてTEAが有効であることを具体例とともに示し、各デザインにおける活用の可能性と課題を明らかにする。結論として、質的研究法は混合研究法に従属するものではなく共進化の関係にあり、質的研究の多様性を理解することが混合研究法全体の発展に不可欠である。