抄録
3次元流体一生物結合モデルを伊勢・三河湾に適用して水質再現シミュレーションを行い,プランクト
ン,栄養塩,溶存酸素ほか低次生態系要素の周年変化の特徴を調べた。計算は1993年4月~1996年3月
までの3年間で,この間の湾の流れ成分には前段の流動シミュレーションで再現された流速,水温・塩分
および鉛直渦拡散係数の時系列を入力し,日射や陸域からの流入汚濁負荷,底泥の栄養塩溶出・酸素消費
等の駆動因子に関しては,観測データに基づいて推定した日毎のデータを与えた。
このシミュレーションで再現されたプランクトン量や栄養塩濃度,溶存酸素量の時空間分布はフィール
ドデータとよく整合し,モデルの妥当性が確かめられるとともに,湾内の栄養塩や酸素動態の詳しい解析
に役立つことがわかった。栄養塩フラックスの解析からは,湾奥部表層水中の1次生産が水温の変動に応
じて3ヶ年で大きく変動した様子や,植物プランクトン成長が主に窒素で律速された状況が示唆された。
また,酸素フラックスの解析からは,底層の貧酸素水塊の発生機構や消長が明らかになった。特に,気象
条件に応じて大きな変動を示した表層の水質項目とは対照に,底層の貧酸素水塊の挙動は一貫しており,
毎年6月頃から湾奥~湾央部で出現,晩夏に全湾規模へと発達し,その後次第に衰退して11月中旬あた
りで消滅することがわかった。