抄録
伊勢・三河湾における流れと海洋構造(水温・塩分)の周年変動を3次元非定常流動モデルによって再
現した。数値シミュレーションは1993年4月~1996年3月までの3年間を対象とし,この間の海上風,
湾口潮位,河川流量そして気象パラメータの日毎の観測データを流動の駆動因子として考慮した。
再現された流速,水温,塩分は空間分布,時間変化のいずれにおいてもフィールド調査の結果とよく合
致し,モデルの信頼性が確かめられた。これらの結果から,伊勢・三河湾の表層の海況は気象状態に応じ
て年毎に大きく変動したこと,特に,夏季の変動が著しかった状況が明らかになった。長雨で冷夏を記録
した1993年の夏は,河川水と海上風の影響で湾奥に時計周りの循環が形成されたこと,これに対し,高
温で渇水となった1994年の夏は流れも相対的に停滞したこと,そして,翌1995年には多堂の出水により
表層全体が沖出しの流れとなったことが特徴であった。このように変動の大きかった表層に対し,湾の中
層部は毎年一貫しており,水深5m付近に発達した大規模な地衡流循環が流れ場を特徴付けることがわ
かった。