自律神経
Online ISSN : 2434-7035
Print ISSN : 0288-9250
レクチャー
自律神経研究の歴史
―情動と自律神経―
田村 直俊
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 59 巻 2 号 p. 197-203

詳細
抄録

情動と自律神経活動の因果関係について,自律神経活動の変化が情動を形成するとするJames-Lange学説(1884, 85)と情動が自律神経活動に影響を及ぼすとするCannon-Bard学説(1927, 28)があるが,両学説が正反対のことを述べているようにみえる原因は,「自律神経系には中枢線維も求心線維もない」と定義したLangleyの見解(1898)にある.Langleyの学問的ライバルL. R. Müllerは,情動と自律神経活動の因果関係は双方向性で(1906),両者ともに間脳の神経ネットワークで惹起されると述べていた(1929).PrechtlとPowley(1990)は臓器感覚(内受容感覚)の伝導路,すなわち自律神経求心路は脊髄視床路であると主張した.Craig(2002)は内受容感覚を伝達する求心線維と交感神経線維が脳内で中枢自律神経線維網(CAN)を構成することを解明した.

著者関連情報
© 2022 日本自律神経学会
前の記事 次の記事
feedback
Top