自律神経
Online ISSN : 2434-7035
Print ISSN : 0288-9250
最新号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
第76回日本自律神経学会総会
  • 岡 尚省
    2024 年 61 巻 2 号 p. 123-126
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル フリー

    パーキンソン病(PD)では起立性低血圧(OH),食事性低血圧(PPH),臥位性高血圧(SH),夜間高血圧(NH)など血圧循環調節機能障害(BPCD)を認める.OHは転倒や予後に影響を及ぼす.PPHも予後不良因子である.SHはPDの約50%に認め,高齢で無動型が多く認知機能も低下している.NHはPDの16%で認められ認知機能障害と関連がある.PDのBPCD対策は,24時間血圧変動測定によりBPCDの状況を評価し,状況ごとに水分摂取,食事の調節,カフェイン摂取,昇圧薬,臥床時の上半身挙上,就寝前の短時間作動型の降圧薬,就寝中の背部温熱療法,日中の腹帯などを組み合わせて,こまめに対応し血圧安定を図ることが重要である.

  • 石井 慎一, 鈴木 知秀, 片山 義雄
    2024 年 61 巻 2 号 p. 127-131
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル フリー

    骨髄は硬い骨組織の髄であり,生体内で最も活発に新たな細胞を日々生み出している臓器である.骨髄の働きが骨代謝と二人三脚で営まれ,それらの重要な調節機構の一つが自律神経であるという構図が,近年の研究で明らかになってきた.本稿では,造骨と造血二つのシステムの深い関係とそれらを包括した交感神経支配が,血液内科医が知らずのうちに血液臨床に応用されている例を中心に,造血システムにおける自律神経の役割を概説する.

  • 豊島 裕子
    2024 年 61 巻 2 号 p. 133-139
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル フリー

    労働者個々の業務別ストレス評価が可能な,ホルター心電図の心拍変動によるストレス評価法を紹介した.筆者の方法はいわゆる長時間解析ではなく,長時間心電図を2分ごとに区切りすべて周波数解析し経時的に表示するいわば,連続短時間解析法である.ストレス映像負荷試験では,対象者がストレスを感じた映像と,低周波成分/高周波成分比(LF/HF)が増加した映像に有意な相関を認めた.ローラーコースター搭乗など本人の自覚を伴わないストレス反応出現も存在する.心拍数が過度に増加するFormula carドライバーではLF/HFの算出が困難となるなどの実例を紹介した.医師・看護師・介護福祉士を対象とした業務上ストレス反応評価の実例を紹介したが,精神的ストレスと運動負荷の識別が困難である,業務日誌記入の煩雑さなど問題点も残っていることが分かった.内外の心拍変動長時間解析によるストレス評価に関する論文をいくつか紹介した.

  • 志水 泰武, 澤村 友哉, 湯木 夏扶, 椎名 貴彦
    2024 年 61 巻 2 号 p. 142-147
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル フリー

    私たちは,ラットにおける中枢神経系による大腸運動制御機構の解明に取り組んできた.その結果,大腸における侵害刺激が脊髄を経由して脳に伝えられ,下行性疼痛調節経路の活性化,脊髄(腰仙髄部)の排便中枢におけるモノアミンの放出,骨盤神経の活性化というプロセスを経て,大腸運動が亢進することがわかった.また,下行性神経の起始部として縫線核および視床下部A11領域が重要であることが明らかとなった.これらの神経核から脊髄に下行する神経の活動を薬理遺伝学的に阻害すると,水回避ストレスで誘発される排便が抑制されることも判明した.本稿では,消化管運動の中枢性制御機構について,私たちの知見を中心にまとめる.

  • 山本 達也
    2024 年 61 巻 2 号 p. 148-150
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル フリー

    排便障害の中でも便秘は高齢者に高頻度に認められる.神経疾患のなかでもパーキンソン病では便秘の頻度が高い.近年,新たな便秘薬が続々登場しており,慢性便秘症に対するガイドラインも発刊されていることから便秘診療が大きく変わりつつある.本稿では便秘の定義やパーキンソン病における便秘の頻度,近年発売された新たな便秘薬を中心に概説する.

  • ―高体温,低体温―
    犬飼 洋子
    2024 年 61 巻 2 号 p. 152-157
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル フリー

    体温調節の病態には高体温(症),低体温(症),変温症がある.高体温は,核心温が通常の調節範囲から上昇した場合で,熱産生が熱放散を上回っている状態である.自律性の対暑反応の低下や高温環境,視索前野の損傷による.とくに脳は高温により障害される.低体温は,核心温が35℃未満の場合をいい,熱産生よりも熱放散が上回っている.自律性の対寒反応の低下や,寒冷環境などによる.核心温が著明に下がると,対寒反応が消失する.変温症は,核心温が環境温の変化で2℃以上変化してしまう病態で,後視床下部または脳幹の障害により,著しい低体温となる.体温異常は生命に危険であり,徴候を見逃さず復温などの治療が必要である.

原著
  • 伊藤 宏文
    2024 年 61 巻 2 号 p. 159-168
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル フリー

    慢性上咽頭炎に対して上咽頭擦過療法(EAT)が行われている.EATが自律神経機能に及ぼす経時的効果の検討を行なった.慢性上咽頭炎39名に能動的起立試験を行い,心拍変動解析を行った.起立試験は安静座位時をphase 1,起立時をphase 2,立位時をphase 3,着席座位時をphase 4とした.評価項目としてHR,CVRR,ccvHF,L/H,SBP,MAP,DBPを4つのphase毎に求めた.治療開始前と治療後を比較して統計学的検討を行なった.結果,EATの経時的効果として副交感神経活動の抑制が認められた.血圧変動の比較からEATには圧受容器反射を改善して血圧の恒常性を保つ作用があると考えられた.EATによる自律神経刺激作用と免疫刺激作用は,相互に影響を及ぼしあい,効果を発現していると考えられた.

feedback
Top