自律神経
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レクチャー
てんかん等に対する迷走神経刺激療法
井林 賢志川合 謙介
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2022 年 59 巻 2 号 p. 212-220

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抄録

迷走神経刺激療法(VNS)は,体内植込型の電気刺激装置で,左頸部迷走神経を刺激し,てんかん発作を緩和する治療である.開発から約30年経過し,薬剤抵抗性てんかんに対する緩和治療としての位置付けが確立している.本邦の初期385例の追跡調査でも,先行する欧米からの報告と同様の有効性と安全性が確認された.VNSの求心性刺激は孤束核に到達後,ノルアドレナリン系,セロトニン系,アセチルコリン系等を経由し大脳皮質の広汎な安定化をもたらし,抗てんかん作用を発現する.頭部ではVNS誘発電位が計測でき,動物実験にてVNSは大脳皮質神経細胞の過分極と自発放電減少をもたらす.ラット聴皮質計測では健常状態での音刺激への周波数応答を向上させる一方,誘発発作下での同期性を低下させるホメオスタティックな作用を示す.VNSは近年,治療抵抗性うつ,頭痛等の病態に対する有効性も示され,今後も注目される脳刺激モダリティである.

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© 2022 日本自律神経学会
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