The Japanese Journal of Antibiotics
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総説
COVID-19ワクチン個別最適化に向けた微量全血での中和活性評価系の確立と実証
川筋 仁史
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ジャーナル 認証あり

2024 年 77 巻 3 号 p. 135-143

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抄録

未知の感染症と対峙しなければならない危機的状況下では,原因微生物に対する免疫獲得状況を個人または集団として正確かつ迅速に把握することが求められる。COVID-19パンデミックでの抗体評価は,従来の方法と同様に,静脈より採血した血液が測定試料として用いられてきたが,静脈採血は,採血技術保有者,採血場所,採血容器が必要となる。また,採血を行うためには,採血者と被採血者との物理的接触機会と,一定の採血時間の確保が必要なため,パンデミックでは感染リスクを伴う作業となる。これらは,大規模に抗体を評価するうえでの障壁となり,被評価者を限定してしまう。今回我々は,全血でも評価可能であり,バイオセーフティーレベルを落として扱えるシュードタイプウイルスを用いた中和抗体評価法(CRNT法:chemiluminescent reduction neutralizing test)を利用して,指先微量全血から中和活性評価までの一連のシステム構築に取り組み,安価,保管・輸送の簡便性,長期間の安定性から,指先全血を濾紙に吸収させた乾燥血液を用いた評価が最適と考えた。実際に,ワクチン接種者の協力を得て,指先全血をスタンプ法により採血用濾紙に吸着させたのち,溶媒に濾紙乾燥血液を溶出させることで,中和活性を評価できることを見出し,血清での中和活性値と高い相関性を確認した。数種類の濾紙を比較しつつ変異株に対する評価も行い,時間および温度安定性を確認するなど,採血から測定までの一連のプロセスの条件の最適化を行った。指先採血は,簡便かつ感染リスクを下げられる方法として,新興感染症で必ず課題となる免疫獲得状況を広く知るための安全な手段につながり,ワクチン接種が必要な対象者の選定や最適な接種時期の計画立案など,ワクチン予防効果不透明性の課題を克服できるとともに,今後の様々な微生物へのワクチン接種計画にも応用の可能性が開ける。

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