抄録
抗生物質療法の最大の難点は, 病原微生物の耐性の増大である。Trichomycin1) に対する真菌または原虫の抵抗性という問題は, これを実用化までもち来たした私共当事者の特に大きな関心事である。
伊藤・宮村等2) は, 乳児の糞便から分離したCandida albicans4株とC.albicans Yu1200株の計5株を用いて, Trichomycin含有培地に50代継代培養し, 抵抗性は上昇し難く, 初めの7~8倍にすぎないことを報告した。細谷・中沢3) は, Trichomonas vaginalisは, Trichomycin含有Fブイヨン (浜田) 4) に30代継代培養しても, 抵抗性は全く増大しないことを発表し, 真柄等5) もTrichomonasの抵抗性獲得は, Trichomycin含有培地の継代培養によつても, 臨床上でもまだみとめられていないことを報告した。
今回は, 皮膚白癬症の原因菌であるTrchophyton asteroides (田辺株), T.interdigitale (高橋株) およびT.rubrum (小堀・池永分離株) のTrichomycin抵抗性上昇について観察したので報告する。