1959 年 12 巻 4 号 p. 300-304
現在までに発表された放線菌の産生する抗腫瘍性抗生物質には, Actinomycin群物質1), Antitumor substance 2892), Sarkomycin3), Trichomycin4), Carzinomycin5), Azaserine6), Carzinophilin7), Mitomycin8), Carzinocidin9), Gancidin10), Melanomycin11) 等があり, 最近に到つて梅沢等はRaromycinを報告した。現在までの放線菌抗腫瘍性物質は, 有機溶媒系に移行する物質と, 移行しない物質に大別することができる。細谷, 添田等のCarzinomycin, 原田, 奈良, 岡本等のCarzinocidin, 菅原, 松前, 秦等のMelanomycinは後者に属するが, 本報のMarinamycinも後者に属し, 毒素精製に用いられる部分的濃縮法によつて, 放線菌S-34株の培養濾液 (pH7.4~8.4) にZnCl2を加えると, 紫状の沈澱を生じ, 第2燐酸ソーダで抽出される。Marinamycinは, 血清, 腹水等によつて不活性化されず, 非透析性で, Seitz濾紙に吸着されず, 熱に不安定な物質である。以下, その実験経過を報告する。