The Journal of Antibiotics, Series B
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抗腫瘍性放線菌濾液のScreening方式の検討
加藤 博千葉 輝男松原 宏横沢 宗治松本 圭祐丹野 恭子白取 治伊藤 政志石田 名香雄黒屋 政彦
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1959 年 12 巻 6 号 p. 391-397

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抄録

抗癌性の放線菌濾液を効率高くえらび出すに当つて,(1) なるべく拾いおとさないようにすること,(2) laboriousでないことという2条件は, まず満足されねばならない。次にまた, えらび出したものの数があまりに多く,(3) つまらぬ濾液 (例, 抗かび物質) を多くひろつて精製するの愚はまたさけなければなるまいが, このためには多くのscreening trainingを要する。ただし, 最初の2つの条件がscreeningをおこなうのに際して, まず正面きつて考えるべき第1の基本線と思われる。
第3の条件の吟味は, 更に複雑である。たとえば, 秦の主唱するEHRLICH腹水癌のSmearのcytological findingにweightをかけた方式が, 梅沢の主唱するprolongationにweightをかけた方式にくらべて重量単位あたりの毒性は高いが・かなり抗癌性のつよい濾液をえらび出し, またSloan-kettering方式のtumor spectrumを満足する物質を得るといつたevaluationが現段階でのべられている1) が, まだこれからの長い将来をまつて慎重に決定されるべきことと思われる。
我々は最近, 抗癌性濾液のscreeningをかなり徹底的にすすめることを決意したが, その際まず1つの手段としてHeLa細胞に対するcytotoxic effect (CTE) をしらべることとした。すなわち, EAGLE2) がのべたように, すべての既知抗腫瘍物質が多くの組織培養細胞にかなり無選択に, 且つ非常に高い毒性を示すという事実は, 梅沢の下で新田3) がおこなつたHeLaに対する各種抗腫瘍物質の効果などを念頭におき, また我々がVirus学領域においてこの細胞の示すcytopathic changeの多彩さを熟知していることをも考慮に入れれば, 非常に便利な実験系と思われたし, 実際に各種抗腫瘍物質のdifferentiationを容易にしうる形態的特徴のあることを知つた4)。
また, HeLaと同時に秦の方式に従がつてEHRLICH癌2日の腹に濾液を注射し, 3日目にSmearをつくつてcytological examinationをもおこなつた。この方式も, 本文で述べるように, HeLaでは得られない特徴をもつている。
今回は, 最初にしらべた200株の濾液についての成績をまとめてみた。この200株のうちからは, 従来未知の抗腫瘍物質と思われるものも, 或る程度精製行程に入つており, それらについては続報の予定であるが, この論文では方法論の検討という意味で批判を仰ぎたいと思う。

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