The Journal of Antibiotics, Series B
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内服ペニシリンに関する研究第1編
実験的研究
張 南薫
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1959 年 12 巻 6 号 p. 420-426

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抄録

Penicillin (Pcと略) は主に注射によつて与えられて来たが, これは従来のPenicillinが酸に対して不安定であるため, 内服後に胃酸によつて分解され, 吸収が不完全で, 高い血中濃度が得られず, 従がつて治療効果を期待でき難かつたためである。
従来, 内服用のPenicillinとしては, 緩衝Penicillin G, Benzathine penicillin G, Pyrimidine penicillin G等の諸型剤があるが, 高い血中, 臓器内濃度を必要とする感染症では, やはり注射用Penicillinに頼つており, これら内服用製剤は比較的軽症の治療を対象として来た。ところが, 昨今Penicillinの注射による重症アナフィラキシ一様シヨックのような副使用が出現し, ここに再び安全な内服Penicillinの検討がおこなわれるようになつた。すなわち, 米国における第3回抗生物質年次大会において, この問題が検討され, 内服Penicillinによる副使用出現率が低く1), 殊に, 1948年BEHRENS等2) によつてBiosynthesicによつて作られたPhenoxymethylpenicillin (Penicillin V) は酸に対して安定で, 内服後の吸収が確実で, 血中濃度も高いことがみとめられ, 内服Pcによる治療は, Pc Vを中心として大きく発展した3~13)。しかし, その後, 内服Pcによつても時に重篤な副作用のあることが報告され14~16), 全く安全に投与できるものではないことがわかつたが, 注射に比較すると, その発現は確かに少く1, 17~19), 内服Pcの安定した吸収によつて高い血中濃度を得ることができるならば, 臨床効果を期待し得, 内服Pcの産婦人科領域における役割は大きいと考えられる。
本邦においても, 内服Pcの吸収, 排泄, 臨床成績については既にいくつかの報告があるが14~22), 実験的に動物について各種内服Pcの血中濃度の比較, 消化管各部位からの吸収状態, 併用薬剤や各種条件下における吸収状態について報告したものは少なく, 特に吸収後の臓器内濃度を比較検討した報告はほとんどない。
更に, 臨床的に産婦人科領域において内服Pcの吸収, 血中濃度, 特に婦人の各種臓器内濃度について検討し, 産婦人科領域の感染症に対する臨床効果を検討した報告は全くない。本研究は, 各種内服ペニシリンについて, 実験的ならびに産婦人科領域における臨床的研究をおこなつたものである。すなわち, 第1編においては, 実験的に動物について内服Pcの血中濃度を比較し, 消化管各部位からの吸収, 薬剤併用時および各種条件下の吸収状態, 臓器内濃度を検討し, 動物に対する治療実験の成績について述べる。

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