1960 年 13 巻 1 号 p. 5-7
テトラサイクリン (TCと略) は, 胃腸管中の種々の金属イオンと不溶性の塩をつくるため, 経口投与した場合, 吸収される部分が少く, TCの血清中濃度は余り上昇しないといわれる。 そのために最近はTCの吸収能率をよりよくする努力がなされて来ており, ヘキサメタ燐酸ソーダ1) またはグルコサミン2) 等の添加がその目的のために用いられている。TCに添加されたメタ燐酸ソーダは, 緩衝剤として胃腸管内の金属イオンと結合してTCの不活性化を阻げると推定され, 動物または人体実験における多くの報告は, TC単独投与時よりも2倍近くの血清中濃度を維持1, 祖ろことを証明Lている.薯老等本先に.メタ燐酸ソーダ加TCを経口投与した場合の血清中濃度はTC単独より1.7倍まで上昇することを報告したが, これを実際に臨床的に使用した場合には, 両剤の効果にみとむべき差はなかつた7) ℃ ヘキサメタ燐酸ソーダは, 1カプセル中に380mg混入しているから, 通常の1日4カプセル投与法では, そのためのNaの体内吸収は問題とするに足らぬ量であるが, これを腎または心疾患に応用するときは, 多少問題になりうるという考えの下に, TCのヘキサメタ燐酸塩Tetracycline phosphate complex (TXと略) が製造された。
著者等は, 萬有製薬会社からTX製剤 (ブリサイテトレックス) の供与をうけたので, その吸収および排泄の能率をTC塩酸塩と比較し, またNaの血清中濃度に及ぼすメタ燐酸ソーダならびにメタ燐酸塩の影響について2, 3の実験をおこない, 更に内科的感染症に応用してみたので, ここに報告する。