The Journal of Antibiotics, Series B
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生物学的試料中のフェニール酢酸の微量比色定量に関する研究第1報
フェニール酢酸の1新微量比色定量法
喜井 晴夫
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1955 年 8 巻 9 号 p. 387-390

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抄録

Penicillium chrysogenumのペニシリンG生産時に, フェニール酢酸 (以下PAAと略記) を前駆物質として用いると, 著るしくペニシリンGの生産量を増加する事が認められ, その添加時期, 方法, 量等については, 先人によつて多くの業績が報告されて来た。そして, ペニシリン醗酵培地中におけるPAAの定量的消長は, ペニシリンG生産に最良の醗酵状態を知る上に, またPenicillium chrysogenumのPAA代謝機構を知る上にも重要なことである。
ペニシリンG生産時に, 培地に添加される前駆物質PAAの消長, 或いはその生物学的意義の研究に当つて, これを定量的に検討する必要があるため, 現在までに数人の著者によつて種々の研究がなされて来た。すなわち, SINGH,JOHNSON (1) はHIGUCHI, PETERSON (2) のTwo phase chromatographyを応用し, 青木, 谷口 (3) はPAAを培養液からトルエンで抽出して, その酸度をアルカリにより滴定し, 古武, 笹井 (4) もほぼ同様におこない, 石間, 丹野 (5) はベンゼン抽出後, アムモニウム塩とする重量法を報告している。
比色定量法としては, 滝浦, 吉田 (6) がPAAをニトロ化したのち, 強アルカリ性にして生ずる黄色を定量すること, 植村 (7) はPhenylethyl alcoholの定量法の報告において, PAAがニトロ化したのち, ヒドロキシルアミン, アムモニア水によつて紫色に呈色することを述べている。磯野 (8) は, PAAを特異的に酸化するPseudomonas fluorescensを用いてWARBURG検圧計によつて定量する1種の生物学的定量法を報告している。
私は, なるべく少量の試料で微量のPAAを生物学的な試料,殊に培養液中のPAAを定量するために, 1つの比色定量法を考案し, これでペニシリン醗酵培地中のPAAの消長の定量的研究を可能とし, 更にこの方法が体液, たとえば尿中のPAAの定量にも応用し得ることを明らかにした。
本法はPAAを試料から抽出し, これを低温でニトロ化したのち, アムモニア, アルカリ性の下にヒドロキシルアミンを作用させて発色, 比色するもので, 後述するように, この方法によれば殆んどPAAを特異的に定量し得るものである。なお, 最近S. C. PAN & PERLMANも私と同様の方法によるPAAの比色定量法を発表している。

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