The Journal of Antibiotics, Series B
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各種植物病原菌に対するTrichomycinの効果 第1報
水野 民也大橋 正明酒井 昭美藤部 史郎
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1956 年 9 巻 1 号 p. 29-33

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抄録

最近, 植物病症に対する予防治療剤としての抗生物質に関する報告も多く, Streptomycin, Antimycin, Actidione, Antiblastin等については, 既に圃場試験の段階まで進展している。これら抗生物質に関する研究は, 植物体表面に撒粉または噴霧する方法によるものが多いが, 根部からの吸収によつて予防または治療効果を期待する全身予防剤としての研究も進展し, 鈴木等(3)はAntiblastinの稲熱病に対する全身予防効果を認め, 植物ホルモン的効果も期待できることを報告している。DILLER(4), BONDE(5), MITCHELL(6)等もin vitroでの成功を報じている。更に, LOCKHEAD及びLANDERKIN(7)は, 土壤中の90種の徴について検討し, その交互作用から微生物学的平衡について報告し, WEINDLING(8)はTrichoderma lignorumの発育が柑橘類の立枯病を防止すると報告している。GOTTLIEB及びSIMINOFF(9)は, アルファルファの乾草を土中にすき込むとStreptomyces venezuelaeのChloroamphenicol生産が増加し, tryptoneの添加で更に増大すると報告し, YOUNG(10)等はXylaria multiphxin vitroで樫の立枯病の生育を完全に阻止すると報告している。
しかし, これらの報告は殆んどが室内実験の域を出ず, 実用化は今後の研究にまつよりほかない。Trichomycin(1)(2)はSclerotinia属の大型分生子時代といわれるCandidaに対して顕著な阻止力を持つ点からみて, 植物病予防治療剤としての効果が期待できるので, 数十種の植物病原菌についてその効果を検討し, うち20数種についてin vitroで予防治療剤としての効果を認めたので, ここに報告する。

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