The Journal of Antibiotics, Series B
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悪性腫瘍化学療法の実験的研究 第4報
Actinomycln Jの腫瘍細胞, 殊にその細胞分裂に及ぼす影響
大星 章一青木 一夫
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1956 年 9 巻 3 号 p. 117-119

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抄録

抗腫瘍性抗生物質の研究は, HACKMANN (1) のActinomycin Cの発見を緒として, 最近にわかに活気を呈して来た新分野であり, 米国ではPuromycin, Azaserin (2) 等が注目されており, 我国では梅沢 (3) によつてSarkomycin, 秦 (4) によつてCarzinophillin, 細谷 (5) によつてGannmycin等がそれぞれ抗腫瘍性を示すことが明らかにされた。これらの物質の抗腫瘍性は, 主としてEHRLICH癌, 吉田肉腫等の移植腫瘍を用いて, 腹水貯溜による体重増加の阻止効果および延命効果によつて追求されているが, 腫瘍細胞に対する直接の影響を細胞学的に詳細に追求したものは少ない。吉田 (6) は, 抗癌剤の条件として, その薬物が腫瘍細胞に対して障碍作用を示すこと, 担腫瘍動物に対して延命効果を示すことの2条件を必要とすると強調している。我々 (7, 8, 9) は先にNitromin, Sarkomycinについてその腫瘍細胞に対する直接障碍作用について報告し, その作用機転に言及した。今回我々は, Actinomycinについてその抗腫瘍性を検索する機会を得た。Actinomycinは1940年WAKSMANによつて発見された抗生物質であるが, その高度の毒性のために薬剤として顧みられなかつた物質である。しかし, HACKMANNは各種のActinomycinのうちHBF 386という物質がマウスのSarcoma 37, EHRLICH癌, ラッテのWALKER癌に対して抗腫瘍性を有することを明らかにし, BROCKMANN (10) によつてこのHBF 386がWAKSMANのActinomycin Aとはその組成を異にすることが示され, Actinomycin Cと命名された。我々の使用したActinomycinは梅沢等 (11) によつて発見されたもので, その組成が既知のActinomycin A, B, Cと異なるため, Actinomycin Jと命名されているものである。我々はこの物質の抗腫瘍性を検索する第1段階として, 先づその腫瘍細胞に対する直接障碍作用について検索した。

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