The Japanese Journal of Antibiotics
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抗生物質の体内分布に関する研究
鶏およびラッテにおける蛋白分解酵素剤 (コロナーゼS) のクロルテトラサイクリン吸収におよぼす影響
米沢 昭一畦地 速見中村 久佐藤 修司
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1969 年 22 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

近年, 溶血連鎖球菌の培養液から抽出したStreptokinaseおよびStreptodornaseが, 壊死組織融解剤としての効果がみとめられて以来, Trypsin, Pepsin, Ficin, Bromelain等の蛋白分解酵素も潰瘍性病変に対して, その壊死組織の除去を目的として皮膚科領域で使用されている。さらに平山1, 2)は, 酵素剤を炎症局所に投与したぱあい, 抗生物質の病巣内への滲透性を高めることによつて, 膿汁中の抗生物質濃度を著るしく高め得ることを述べ, さらにまた, 病巣内に局所的に注入した抗生物質は, より高濃度に末梢血中に移行することを証明し, 酵素剤との併用効果があることを報告している。これらはいずれも, 酵素剤を局所的に応用したものであるが, 最近柴田ら3)は, 蛋白分解酵素を筋注, 静注または口腔内投与しても, 筋肉内に注射されたペニシリンの膿中または血中への移行を著るしく促進することをみとめており, Bromelain4)やVaridase (StreptokinaseおよびStreptodornase) 5)を抗生物質と同時に経口投与し, 臨床的に好成績をおさめた例も報告されている。しかし, 蛋白分解酵素を経口的に投与したばあいの抗生物質の各組織への移行量に対する影響を比較検討した報告は少なく, わずかに徳田ら6, 7)がBromelain, Proctase (Protease), Lysozymeを用いて, また石井ら8), PECILEら9)がα-Chymotrypsinを用いて血中および皮下組織中の抗生物質濃度に対する影響を比較検討しているにすぎない。
そこでわれわれは, 酸性Protease製剤“コロナーゼS”(以下, CNと略) を用いて, これとクロルテトラサイクリン (以下, CTCと略) とを同時に鶏またはラッテに経口投与したばあいの心, 肝, 腎, 肺, 脾, 膵, 睾丸, 脳などの各種臓器ならびに血液, 胆汁, 筋肉へのCTC移行量をCTC単独投与のぱあいと比較検討した結果, CNがCTC吸収を促進する成績を得たので, 報告する。

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