The Japanese Journal of Antibiotics
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Histamine遊離抗生剤の生物学的検定法
山田 重男豊島 良枝小枝 武美松本 朋徳松尾 勝一
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1969 年 22 巻 1 号 p. 8-13

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抄録

抗生物質に混在するHistamineまたはHistamine様物質の多くは, 製品の精製過程に不純物として混入するばあいが多いので, 厚生省は抗生物質製剤基準1) を設け, 抗生剤についてHistamineおよびHistamine様物質の生物学的検定をおこなうように指示している。Histamineの生物学的定量方法については, 従来から種々報告されているがそれらはいずれもHistamineの特異的な薬理作用を応用したもので, たとえば, 末梢血管の拡張作用を観察する方法2), 腺臓器に対する分泌作用3), 平滑筋の収縮作用4, 5, 6) 等を観察する方法等が挙げられる。それらの中で現在Histamineの生物学的定量法で一般に広く応用されているのはGUGGENHEIMの摘出モルモット腸管法7)と猫血圧下降法2) である。抗生物質製剤基準では, 抗生剤中に含まれるHistamineおよびHistamine様物質の生物学的検定方法として, 猫および犬血圧下降法が採用されている。その方法を詳述すると, まず, 実験動物として健康な成熟した猫および犬を使用し, Pentobarbital-Sodium麻酔したのち, 犬頸動脈または股動脈を露出し, これにカニューレを挿入し水銀マノメーターを介してその圧をKymography上に描記するいわゆる観血的方法であり標準Histamine 0.1mcg/kg静脈投与で惹起せられる血圧下降度を求め, これと被検抗生剤による血圧下降度を比較定量する。しかし, 近年2, 3の抗生剤が組織からHistamineを遊離することが報告されているので, Histamineの生物学的定量法としては血圧下降法のみでは不明の点が生じてくる。Histamine遊離抗生剤として, AMON8)は塩基性抗生物質であるStreptomycin, Dihydrostreptomycin, Kanamycin等をあげ, BUSHBY等9)はPolymyxin BおよびPolymyxin Eを, 著者等10)はPolymyxinと化学構造の類似するColistin硫酸塩, 酒石酸塩およびパントテソ酸塩がHistamine遊離物質であることを証明した。すなわちごく少量のPolymyxinおよびColistin塩類を犬, 猫に投与すると血圧は著明に下降し, Histamineの含有が推定され, その降圧機序はこれらの抗生剤が体内諸臓器組織中のHistamineを遊離させることに起因していることがわかつた。このように抗生剤には2, 3Histamine遊離物質が存在するので, 現在利用されているHistamineの検定法に猫血圧下降法のみでは不充分で, 抗生剤にHistamineおよびHistamine様物質が直接混在しているのか, またはそのものがHistamine遊離抗生剤であるのか, この両者の区別が判然としない。そこで著者等はこの間題を明らかにするため, HistamineおよびHistamine遊離物質を用いてHistamineの生物学的検定方法を再検討したので, その成績をここに報告する。

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