The Japanese Journal of Antibiotics
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合成Penicillin合剤 (Broadcillin ‘Banyu’) の使用経験
水野 重光松田 静治佐野 慎一丹野 幹彦
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1970 年 23 巻 3 号 p. 312-316

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抄録
近年, 感染症治療にさいして化学療法剤相互の併用療法が日常盛んにおこなわれるに至つた。併用療法の目的として, 抗菌域の拡大, 混合感染の治療, 耐性獲得の軽減, 防止, 併用効果などが指摘されており, 既に配合量の定まつた市販の合剤も出現している。通常感染症の治療は, 起因菌の分離とこれに適合した薬剤の投与が理想ではあるが, 現実には, 菌検出の困難なことも少なくない。たとえば, 産婦人科領域でも骨盤内感染症, 新生児, 未熟児感染症などでは, 起因菌の検出不能または病期の関係で菌検査の困難なことが多く, このようなばあいは, 緊急の化学療法の必要性から, これらの併用療法が適応となることが多い。併用療法を目的とした抗生物質の合剤のうちBroadcillin ‘Banyu’は, Ampicillin (AB-PC) とOxacillin (MPI-PC) の合剤で, 両者の混合比は1:1である。このうちAB-PCは広領域という点では始めての合成PCで, グラム陰性桿菌などに対する治療効果は既に広く評価されているが, 球菌, ことにブドウ球菌に対する抗菌力は他のIsoxazolyl PCに較べて弱く, この点, 耐性ブドウ球菌に有効なMPI-PCをAB-PCに配合することは, 少なくともグラム陽性球菌を含めて広い抗菌作用が期待されることになり, したがつて, ブドウ球菌, レンサ球菌, 大腸菌, 嫌気性菌およびこれらの混合感染による骨盤内感染症, 新生児, 未熟児感染症の治療に本剤の有用性が期待されるのである (表1)。
本稿では, 万有製薬から提供をうけたBroadcillinについて2, 3の基礎的実験成績とともに, 産婦人科領域の感染症および感染予防例に対する臨床応用成績について報告する。
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© 公益財団法人 日本感染症医薬品協会
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