1971 年 24 巻 3 号 p. 121-125
緑膿菌感染症の増加は現在, 外科, 内科, 耳鼻咽喉科, 泌尿器科等, 多くの臨床各科において重要視されている1).緑膿菌の病原性は, 一般に弱いといわれているが, 広域抗生物質の長期投与によつてひき起こされる菌交代症, 免疫抑制剤の使用, 放射線療法, また, 白血病, 癌等の重症基礎疾患による生体の抵抗力の著るしい減弱等の条件下では, 本菌種による慢性の難治感染症の出現率が高く, 大いに注目されている2, 3).そして, 本菌種が2次的に感染し, 疾病を持続または悪化させるという事実は, 病院内交差感染の問題を提起しており, この交差感染の実態はファージ型別4, 5), ピオシン型別5), 血清型別1) 等によつて解明されつつある.
私共は, 1961年4月から1970年8月までの約10年間に, 各種臨床材料から検出された緑膿菌について, その分離率を集計し, 抗生物質感受性について検討した.