Colistinは, 1950年KOYAMA
et al.1) が福島県下の土壌から分離した好気性胞子形成性桿菌 (
Bacillus polymyxavar.colistinus) から抽出されたPolypeptide系抗生物質である。本薬は, グラム陰性桿菌に卓効をもち, 臨床的には耐性菌の生じた赤痢菌, 緑膿菌の治療に用いられている。最近, Colistinの構造式がSUZUKI
et al.2~5) によつて決定された。それを第1図に示したが, 本物質は10個のアミノ酸からなり, その構成アミノ酸は, 6分子のL-α, γ-ジアミノ酪酸と2分子のL-スレオニン, そして各1分子のLおよびD-ロイシンからなつているDecapeptides系抗生剤であることが判明した。市販Colistinは, Colistin AおよびBといわれる2成分の混合であり, 第2図に示すように, Polymyxin BおよびCirculinは非常に似ているが, 構成成分のアミノ酸の配列と脂肪酸 (FA) の種類が若干異なつている。SUZUKI
et al.5) およびWILKINSON
et al.6) によれば, Colistin AはPolymyxin Eと, Colistin BはPolymyxin E
2と同一物質であるという。Colistin類の構造と抗菌作用との相関関係について, SUZUKI7, 8) は5個のL-α, γ-ジアミノ酪酸のγ-アミノ基とα-スレオニンの遊離OH基が官能基であると報告している。
先に著者等の1人松本9) および山田等10) は, Colistin塩類の血圧に対する作用を検討した結果, Colistin塩類 (硫酸塩, 酒石酸塩およびパントテン酸塩) は, いずれも著明な降圧作用を示し, その作用機序は体内のHistamine様物質の遊離に起因し, 一方, 誘導体であるメタンスルホン酸は昇圧作用を示し, 塩類とは全く相反した作用をもつていると報告した。
今回, 著者等は, これら薬物の構造-活性相関関係を知るため, これら薬物の毒性, 心臓機能, 血管および平滑筋に対する作用を比較観察したので, その成績を報告する。
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