The Japanese Journal of Antibiotics
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パロモマイシソによる条虫駆除の1例およびその作用機序に対する1観察
金沢 裕
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1971 年 24 巻 3 号 p. 143-145

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抄録

条虫は, かつては比較的駆除し難い人体寄生虫の1つで, 綿馬エキス, またはその有効成分のフィルマロン, ザクロ根皮などが用いられたが, その効果は不確実なばあいもすくなくなく, 副作用もかなりの頻度にみられるといわれている。
その後, アテブリン (Quinacrine hydrochloride) が本症にきわめて有効なことが知られ, 広く用いられるようになり, われわれも本剤同様の抗マラリア剤であるCamoquineによる治験をも経験した。
アテブリン系薬剤は, かなり有効な薬剤であるが, 年少者に用いたばあいに, やや副作用が多いといわれている。また, 吸虫の治療剤として使用されているビチオノール系薬剤も, 本症に有効で, とくにその誘導体であるニクロスアミド (Niclosamide: Yomesan) は, 駆虫率が極めて高いという。しかし, 本剤による駆虫のさいは, 虫体が変性されて排出されるので, 完全駆虫の早期判定には困難を感ずるばあいが多いという。
1959~1960, エチオピアのWAGNER3) 等は, アメーバ症治療にパロモマイシソ (Humatin) を用いると, 同時に寄生していた条虫が排出されることを経験した。ついで, イタリアのULIVELLI4)(1963) は, 本剤による条虫駆除の有効性について記載し, 後述のように本治療法の有効性についての報告がつぎつぎとみられるようになつた。
われわれは最近, 広節裂頭条虫症の1例に, 本剤を使用し, 容易に完全駆虫の目的を達することができたので報告する。

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