The Japanese Journal of Antibiotics
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Minocyclineの甲状腺腫発生作用に関する研究
斎藤 公司重城 利国橋爪 一光上原 昭夫柁原 昭夫竹村 喜弘女屋 敏正山田 隆司
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1971 年 24 巻 6 号 p. 265-271

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抄録

ASTWOODとその研究グループ1, 2) は, 106種の抗甲状腺剤について, MCGINTY and BYWATERI3) は56種の抗甲状腺剤について報告をおこなつたが, その後約1,000種以上の薬剤が抗甲状腺作用をもつかどうかについて検討され, そのうち約300種が抗甲状腺作用をもつことが明らかにされた。こうした抗甲状腺剤の化学構造は様々であるが, 大部分の薬剤はThionamide群かAniline群かに属している4)。最近の研究によると5, 6),in vivoにおける甲状腺ホルモン合成は, 各種抗甲状腺剤によつて, 次に述べるような順序で抑制されると考えられている。(a) まずヨードタイロシンが縮合してThyroxine (T4) やTriiodothyronine (T3) が合成される過程が抑制され,(b) 次いで, Diiodotyrosine (DIT) の産生が抑制され,(c) 最後にMonoiodotyrosine (MIT) の産生が抑制されるのである。
各種の抗生物質を動物に投与すると, 甲状腺機能を抑制するという報告8, 9) はあるが, しかし詳細に検討すると, いずれの報告も不確実な点をもつており, 抗生物質がホルモン産生を抑制すると断言するに足る証拠はない10~12)。
最近BENITZ et al.13) は, 新らしいテトラサイクリンの誘導体であるMinocyclineをラッテに投与すると, 甲状腺が腫大することを報告し, NOBLE14) も, ラッテにMinocyclineを投与すると, 甲状腺上皮細胞の肥大することを報告した。こうした2つの研究は, 甲状腺重量や組織的変化にもとついたものであり, Minocyclineの甲状腺腫発生作用機序については全く触れていない。さらに, Minocyclineと化学構造上似た物質にやはり甲状腺を腫大させる作用があるかどうかについてもしらべていない。テトラサイクリン系の薬剤は, 日常広く使用される薬剤であることから, 本研究では, Minocyclineおよび誘導物質がどのようにして甲状腺腫を発生させるかを知るため, 各種条件下における薬剤の作用を追求した。

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