The Japanese Journal of Antibiotics
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3', 4'-Dideoxykanamycin Bの細菌学的研究
三橋 進倉茂 達徳山口 宣夫稲福 全昌河原条 勝己渡辺 忠洋笠井 隆夫宮内 慶之輔野宮 文三
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1973 年 26 巻 2 号 p. 89-96

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抄録

患者から分離された抗生物質耐性の大腸菌, ブドウ球菌や, 多くの薬剤に抵抗性の緑膿菌は, Kanamycin Aの3'位の水酸基をATPの存在下で酵素的に燐酸エステル化し, この薬剤の抗菌活性を失わせる1)。その不活化機構にもとずいて, 梅沢らは, 3'位の水酸基を燐酸エステル化されない他の基に置換することによつて, 緑膿菌や耐性菌に有効な誘導体に変換できると考え, 梅沢純夫らと共同研究に入つた。
これらの不活化機作の理論的追求と置換基の変換研究の中から, Kanamycin Bの3', 4'位の水酸基を水素に置換した3', 4'-Dideoxykanamycin B (以下DKBと略) が特に緑膿菌および多くの薬剤耐性菌に対して, きわめて有効なことを見出した2)。
さらに, 本物質の開発工業化研究がおこなわれ, 純品の工業生産が可能な方式を確立し, 現在までにDKBの基礎的評価研究の結果,in vitroおよびin vivoでグラム陽性菌はもちろん, グラム陰性菌に対して有効性がきわめて高いことがみとめられ, 従来のこの領域で用いられている薬剤に比較しても, 効果, 毒性の面からみて, より有用な物質であることが明らかとなつた。今回は, 主として細菌学的な面から, 本物質について検討したので, 以下その成績を報告する。

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