感染症に対する化学療法は, 常識的にまず感染病巣の膿または分泌物中から病原菌の分離同定をおこない, その分離菌が起炎菌と確認されたばあい, 諸種の抗菌性物質の薬剤感受性試験をおこなつた結果, もつとも起炎菌が感受性をもち, 副作用の少ないと考えられる有効な抗菌性物質を投与するのが化学療法の根本原則であろう。
しかし, 病巣分離菌が, 不明または2種以上の混合感染例に対しては, とうぜん広域抗菌スペクトラムの抗菌性物質の治療効果に期待するほかなく, Tetracycline系抗生物質もそのうちにいれられよう。
Minocycline (Minomycin) は, 1967年米国Lederle社研究陣によつて, 6-Demethylchlortetracyclineから誘導合成され, 化学名を7-Dimethylamino-6-demethyltetracyclineと称し, 新持続性Tetracycline系抗生物質としてグラム陽性球菌およびグラム陰性菌に対して殺菌的に作用する広域抗菌スペクトラムの新抗生物質として周知されている。
著者は, すでにMinocycline内服カプセル製剤について, その試験管内抗菌力, 吸収, 排泄, 分布および臨床的検討をおこなつた成績に関して発表したが, 今回とくにLederle社で開発したMinocycline dry-syrupは1g中にMinocycline 20mg (力価) を含有する小児, 乳幼児用の投与製剤として期待され登場してきた。
本製剤に関して, その基礎的ならびに耳鼻咽喉科領域感染症に対して臨床的検討をおこなつた結果, 良好な成績がえられたので報告する。
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