The Japanese Journal of Antibiotics
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小児急性細菌性上気道感染症に対するJosamycin propionateの使用経験
小林 裕赤石 強司西尾 利一小林 陽之助相原 雅典
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1973 年 26 巻 3 号 p. 267-276

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抄録

Josamycin (JM) は, 高知県長岡郡本山で採取された土壌から分離したStreptomyces narbonensis var. josamyceticusによつて産生される国産のマクロライド系抗生物質である1~8) 。その試験管内抗菌力は, マクロライド系抗生剤中では, Erythromycin (EM) には劣るが, Leucomycin (LM) に類似しているといわれる3, 9, 10)。われわれ11) は, 病巣由来の黄色ブドウ球菌について, 最小発育阻止濃度 (MIC) のPeakは, EM O.4, JM 1.6mcg/mlであつたが, 臨床効果から見て, その差はほとんど問題にならないと考えられることを報告し, 中沢ら12) は, マウスのブドウ球菌感染症に対して, JMはEMに近い効果を示し, 肺炎球菌感染症ではむしろすぐれていたと述べている。マクロライド系抗生剤相互間の交叉耐性については, いずれも3, 9~12) その存在をみとめているが, 三橋9) は, ブドウ球菌中に, EMにはMICが高く, JMには低い1群の菌 (C群菌) 13) をみとめ, JMは, LMと同様に耐性を誘導しないと述べており, これはJMの利点の1つであろう。なお, マイコプラズマに対しては, 他のマクロライド系抗生剤と同様に, 抗菌力がある3)。
内科的細菌感染症に対するJMの有効性については, 多くの報告があり14~16, 18~25), 小児科領域においては, 藤井ら26) は, 27例のうち17例 (63.0%) に有効で, LMに匹敵すると述べ, 市橋ら27) は11例のうち10例に有効, 中沢ら28) は57例に投与し, 治効率約87%と報告し, われわれのブドウ球菌感染症15例では11例に有効であつた11)。
マクロライド系抗生剤の小児科領域における価値は高いが, EMは吸収が悪く, しかも消化器障害が強い。EMの誘導体であるPropionateやEstolateは, 吸収はよいが, 時に肝障害をみることは周知のことで, 一長一短がある。したがつて, 以上の成績から, JMに期待が持たれるのであるが, 従来は錠剤のため幼児以下の年令ではほとんど使用できなかつた。
今回, JMの誘導体で, 顆粒状でシロップ剤として使用できるJM-propionate (JM-prop.) が開発され, JMにくらべて吸収は遅く, Peakは低いが, むしろ血中濃度の持続は長く, 実験的感染症にはJMと同様に有効であることが報告され, その安全性もみとめられた30~34, 59) ので, われわれも小児急性上気道感染症に試用し, その効果を検討した。

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© 公益財団法人 日本感染症医薬品協会
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