The Japanese Journal of Antibiotics
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合成ペニシリンAmpicillinとDicloxacillinの併用効果に関する試験管内評価
須田 武雄吉田 艶子八耳 輝子中沢 昭三
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1973 年 26 巻 6 号 p. 504-511

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抄録

化学療法の発展とともに, 避けることのできない問題として, 細菌の化学療法剤に対する耐性化の問題があり, 化学療法剤の作用機構の解明とともに, 種々な方面からの耐性機構の解明がおこなわれている。
Benzyl penicillinの加水分解酵素の報告以来, 薬剤不活化酵素の研究の発展には目ざましいものがあり, 特にPenicillin耐性に関してPenicillin系およびCephalosporin系抗生物質がもつβ-Lactam ringを開環し, その抗菌力を消失させる。EC 3, 5, 2, 6, β-Lactamaseに関して, 酵素化学的な面から多くの報告がある。
一方, Methicillin (DMP-PC), Oxacillin (MPI-PC), Cloxacillin (MCI-PC), Dicloxacillin (MDI-PC) などの合成ペニシリンは, ブドウ球菌の産生するPenicillinaseに安定であり, 耐性ブドウ球菌感染症に対する有効性がみとめられている。
1964年, HAMILTON-MILLER, et al.1, 2) は, ブドウ球菌の産生するPenicillinaseを用いて, DMP-PCやMPIPC, MCI-PCがPenicillin G (PCく葺) およびAmpicillin (AB-PC) の分解を阻害しないが, Bacillus cereus, B.licheniformisの産出するPenicillinaseに対して, DMP-PC, MPI-PC, MCI-PCがPC-GおよびAB-PCの分解を拮抗的に阻害すると報告している。また, グラム陰性菌の産出するPenicillinaseについて, 1964年HAMILTON, et al.1), 1964年SUTHERLAND, et al.3) は, Escherichia coli, Klebsiella aerogenes, Proteus morganii, P.vulgaris, Enterobacter aerogenesの産生するPenicillinaseを用いて実験し, PC-G, AB-PC, Cephaloridineの分解がDMP-PCやMPI-PCによって阻害され, その阻害作用はDMP-PCのほうがMPI-PCにくらべ強いことを報告している。
1966年ACRED, et al.4), 1969年峯5) らによつて, MCI-PCとAB-PCの併用効果が検討され, 併用によって抗菌スペクトラムが相補的に拡大され, 一部のAB-PC耐性のE.coli, P.vulgarisのある株に抗菌力が増強することをみとめている。
今回, 私どもは, グラム陽性, 陰性菌に幅広く有効であるが, Penicillinaseに不安定で, ペニシリン耐性菌に無効なAmpicillinと, CloxacillinよりC1が1個多く, グラム陽性菌に有効で, Penicillinaseに安定なDicloxacillin (MDI-PC) を併用し, そのin vitro効果を検討し, 以下の成績を得た。

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