1973 年 26 巻 6 号 p. 512-518
広範囲な抗菌スペクトラムをもっAminobonzyl penicillin (AB-PC) のPonicillinase (PCase) による分解に対して, PCaseに安定な合成ペニシリンが阻害効果を示す事実は, 1962年にHAMILTON-MILLER, 1964年SUTHERLAND, 本邦では1969年に峯らによって既に報告されている1, 2, 3)。峯らは, AB-PCとMCI-PC (Methylchlorophenylisoxazolyl penicillin) との協力作用に関する研究で, in vitro実験においてEscherichia coli, Proteus vulgarisに特に協力作用をみとめ, AB-PC耐性大腸菌における実験で, MCI-PCを併用することで, AB-PCの分解が抑制され, AB-PCの殺菌作用が増強されること, in vivo実験においても, マウス実験的大腸菌感染症の治療実験で併用による良好な治療効果をみとめている。
さてHetacillinは, 1964年Bristol研究所において開発された広範囲スペクトラムをもっAB-PC類似の合成ペニシリンで, 抗菌力などに関する細菌学的評価について, 教室の中沢らの報告がある4)。
われわれは, 今回MCI-PCにくらべ抗菌力がやや優れたDicloxacillin (MDI-PC) をこのHetacillinと併用することによって, その併用効果および酵素化学的な意義について検討を加えた。