The Japanese Journal of Antibiotics
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小児科領域におけるMinocycline (Minomycin) 顆粒の使用経験
特に尿路感染症について
小林 裕赤石 強司西尾 利一小林 陽之助寺村 文男
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1974 年 27 巻 5 号 p. 653-663

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抄録

Minocycline (MNC) は, 1967年MARTELL & BOOTHE1)がDemethylchlortetracycline (DMCT) からジメチルアミノ基の導入によつて合成した新Tetracycline (TC) 系誘導体で, TCと比較して, 抗菌範囲はほぼ同様であるが, 抗菌力がグラム陽性菌では2-4倍強く, しかもTC耐性ブドウ球菌にも有効であり, 血中濃度は経口投与後3時間にPeakがあり, 有効血中濃度が12時間以上持続し, 24時間でもかなりの濃度が血中にみとめられるといわれ, その臨床効果については多くの報告があり2-10), すでに実用に供されている. ただし, グラム陰性桿菌 (GNB) に対する抗菌力はTCとほぼ同等とする報告が多く2, 6, 10), 尿中への排泄は従来のTC系抗生剤にくらべて少ないといわれ3-8), 石神ら8)はGNBによる尿路感染症に対しては満足すべき効果は得られなかつたと報告している.
しかし, 以上の成績はCapsule剤によるものであり, 本剤に利点があるとしても, 剤形の点から乳幼児には使用困難であつた. そこで乳幼児に投与の容易な穎粒がつくられ, 以上の本剤の特徴から, まず上気道の細菌感染症に対する効果が検討され, 有用であるという結論が得られている11-14).
しかし, 尿路感染症に関する報告は乏しく12, 13), その声価は一定していない. 上述の本剤の性格から, あまり期待し得ないとも考えられるが, 中沢ら2)によれば, 本剤は肺炎桿菌にはTCと同様有効であり, Proteus vulgarisに対してはTCよりすぐれた抗菌力を示すといわれ, このことがそのまま臨床効果に反映するとすれば, これらの細菌による感染症が増加しつつあり, しかもこれらに有効な経口投与可能な抗菌剤が少ない現在では捨て難い魅力をもつものといわねばならない. なおまた, 大腸菌による尿路感染症に対してあまり期待できないとしても, その理由が本剤の尿中への排泄が少ない点にあるのか, あるいはTCとの交叉耐性によるのかを明らかにしておくことは, もし後者であるとすれば, 本剤のLong-actingという性格にも得失両面があるということを承知した上で, 本剤の正確な適用に対して有力な示唆を与えることになるであろう.
耐性ブドウ球菌に有効な抗生剤は少なくはない。逆説的にいえば, たとえ限定はあつても, GNB感染症に対する効果の実態を明らかにしておくことこそ, むしろ重要であるともいい得よう. このような観点から, 尿路感染症に対するMNC顆粒の使用成績の分析を試みたので, その成績について報告したい.
なお, マイコプラズマに対して, TCは, 最小発育阻止濃度 (MIC) においては, マクロライド剤には劣り, 陰影消失も遅いにもかかわらず, 臨床効果はほぼ同様といわれる15). 本剤の抗菌力はTCに劣るといわれるが16) , 臨床的に有効であるかどうか, その適用範囲にマイコプラズマ感染症を含みうるかどうかは, 呼吸器感染症の治療に関して重要な点であり, その使用成績は今までの諸報告に散見され有効とされてはいる7, 12)ものの, 症例数はまだ少ないので, 例数を重ねる意味で, 少数ではあるが, わわれの使用経験もあわせ述べる.

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