The Japanese Journal of Antibiotics
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OE-7 (ステアリン酸エリスロマイシンカプセル) の連続服用によるヒトの血中濃度に及ぼす食事の影響
山下 喬螺良 英郎
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1977 年 30 巻 7 号 p. 517-520

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抄録

エリスロマイシンを臨床に用いるばあいに, 胃液分泌物からエリスロマイシンを保護することが研究され, エリスロマィシンの多くの塩類が開発されている。その1つに, ステアリン酸塩がある。しかし, ステアリン酸エリスロマィシンも, エリスロマイシンと同様に, 耐酸性に乏しく, 胃酸 (pH=1.2) による失活は37°C 5分間で力価の95%を越える1)。そのため, ステァリン酸エリスロマイシンも胃内で崩壊した後, 失活が起こり, 期待した効力が発揮されないばあいも考えられる。そこで, 大塚製薬技術課の明石, 河内らは, ステアリン酸エリスロマィシンの安定したBioavailabilityを目して, その腸溶性顆粒充填カプセル (OE-7) の開発を試みた。
著者ら2, 8) はすでに, ステアリン酸エリスロマイシン腸溶性顆粒充墳カプセル (OE-7) は対照薬剤として用いたステアリン酸エリスロマイシンカプセル (D社製品) にくらべて, 第1液中での安定性試験においてはるかにすぐれ, また空腹時服用の血漿中濃度においても, 有意に高い値を示したことを報告した2)。また, 一般に胃内容排泄速度が遅いといわれている胃下垂のヒトに服用させたばあい3) でも, 血漿中濃度が有意に高く, 胃内通過の点でもすぐれた成績が得られたことを報告した。
しかし, 患者が薬を服用するのは空腹時ばかりでなく, 食後のばあいも多く, 食事のために胃内容物の容量が増し, 薬物の胃内通過がわるくなり, 期待される薬効が発現しないことも考えられる。特に, 耐酸性に乏しい医薬品, またエンテリックコーティングを施した医薬品については, 問題となるところである。
ステアリン酸エリスロマイシン腸溶性顆粒充填カプセル(OE-7)のばあい, 耐酸性に優れ, 胃内での失活のおそれは少ないにしても, 胃から十二指腸へ移行する速度が食事によりどのような影響を受けるかを検討することは, 期待する臨床治療上, 重要なことである。
したがつて, 本試験は, OE-7服用時の食事による影響をみる目的で, 対照薬剤をステアリン酸エリスロマイシンヵプセル(D社製)とし, 6時間毎5回連続服用してその血漿中濃度を検討し, 知見を得たので報告する。

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