The Japanese Journal of Antibiotics
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胸部外科領域における抗菌性抗生物質の組織内濃度についての臨床的検討
富木 経三石川 創二
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1977 年 30 巻 7 号 p. 511-516

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抄録

最近の抗生物質の開発はめざましく, 特に合成ペニシリンにおいて, すぐれたものが多い。これはAminobenzyl penicillin (AB-PC) に代表されるが, このAmino基が, Sulfonyl基に置換されたものが, Sulfobenzyl penicillin (SB-PC) である。SB-PCは, Carbenicillin (CB-PC) とともに近年脚光を浴びており, Broad spectrumの抗菌力をもち, さらに従来のAB-PCではみられなかつた緑膿菌, 変形菌にも抗菌作用を示す特徴をもつている。
胸部外科領域, 特に肺切除術後の感染予防や肺感染症に対して, 常に抗生物質が投与されるが, このさい, 抗生物質の生体内移行, とりわけ病巣の存在する肺をはじめ, 胸腔内の各々の組織内濃度のパターンを知ることができれば, きわめて有効な術後感染対策が可能と思われる。もちろん, 予想される起炎菌, さらには起炎菌の決定, 薬剤感受性のチェック, 薬剤の排泄状況, 副作用等を考慮することはいうまでもない。
従来, 人の生体組織, 臓器内への抗生物質移行の検索は非常に困難とされ1), なかでも肺に関しては, ほとんど臨床的検討がなされていない。そこで著者らは, 専門領域における, 肺手術後の感染対策として, 胸郭内の抗生物質の組織内濃度を知るために, 開胸症例について, SB-PCを術中点滴静注し, 抗菌作用に重要な示唆を与える術中血中濃度および組織内濃度を測定し, いささか興味ある知見を得たので, 文献的考察を加えて報告する。

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