The Japanese Journal of Antibiotics
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血液疾患に合併した重症感染症の治療
ブドウ糖非醗酵性グラム陰性桿菌感染に対する点滴静注用ミノマイシンの使用経験
吉田 博中村 善明平栗 誠鈴木 照夫五十嵐 忠行竹沢 将俊高畑 秀夫木村 秀夫田中 鉄五郎松田 信秋月 健内田 立身刈米 重夫
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1979 年 32 巻 12 号 p. 1385-1389

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抄録

血液疾患, 特に急性白血病の化学療法は, 抗腫瘍剤の開発, 投与方法の改善さらに補助療法の進歩によつて完全寛解率は向上し, 長期生存例が多数みられるようになつてきた1, 2)。しかし, 急性白血病の2大直接死因としての出血および感染の問題は, 解決されたわけではなく, 急性白血病の治療上重要な合併症として存在している。 出血の対策としては, 血小板輸血が臨床上利用されるようになり, 出血死の割合は減少してきているが, 反面, 感染死は増加の傾向にある3~7)。 感染症は, 各種抗生物質の出現によつて, グラム陽性菌は激減し, グラム陰性菌, とりわけKlebsiella, Pseudomonasaeruginosa, Escherichia coliなどによる感染症が主体を占めている。 最近, 急性白血病の起炎菌としてのPs. aeruginosaの検出率は, 減少傾向にあるのに反して, 緑膿菌以外のブドウ糖非醗酵性グラム陰性桿菌, Acinetobacter, Enterobacter, Serratiaなどの検出率が増加傾向を示している8~12)。これらの菌種は, 従来のセフアロスポリン系薬剤や合成ペニシリン製剤に耐性を示し, 臨床上大きな問題となつてきた。
現在, すべての病原菌に抗菌作用を有する抗生物質が存在しないこと, および急性白血病の感染症は原疾患自体および強力な化学療法によつて, 骨髄およびリンパ球機能の抑制によつて患者の末梢血穎粒球数の激減, 細胞性および体液性免疫不全を惹起し, 各種の重症難治性感染症を合併する。 したがつて, 急性白血病治療の成否は, 出血の管理と同時に, 感染症の予防と治療が重要な因子となつている。
今回, われわれは, 日本レダリー社の点滴静注用ミノマイシン (注射用塩酸ミノサイクリン) を血液疾患, とりわけ急性白血病に合併した種々の感染症患者に投与し, 知見を得たので報告する。

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© 公益財団法人 日本感染症医薬品協会
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