The Japanese Journal of Antibiotics
Online ISSN : 2186-5477
Print ISSN : 0368-2781
ISSN-L : 0368-2781
産婦人科領域における感染症のAmpicillin-Cloxacillin合剤 (Viccillin S‘Meiji’) の点滴静注法による治療経験
高畠 弘西野 るり子椎名 正樹佐藤 悠二大野 虎之進
著者情報
ジャーナル フリー

1979 年 32 巻 9 号 p. 956-959

詳細
抄録

産婦人科領域における感染症の起因菌は他科領域におけるそれらの動向と軌を一にするかのように, 大腸菌を主体とするブドウ糖発酵グラム陰性桿菌によるもの, Pseudomonas aeruginosa, Alcaligens faecalisなどのブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌によるもの, また嫌気性菌によるものなどの台頭が明らかになつてきたのは, おおむね1960年前後からであろうと思われる。
われわれも過去10年来この点に注目してきており, 産婦人科領域における感染症治療上の1つの指標とするため, 1977年に1968年から1974年の間の7年間の分離菌種の年次的変動と化学療法剤感受性の変遷について調査した。 その結果, 分離菌をグラム陽性球菌群とグラム陰性桿菌群に大別してみると, それまで分離されて来た割合の多かつたグラム陽性球菌群にくらべて, グラム陰性桿菌群が69.49% (約70%) と逆転増加を示し始めたのは1974年以降であり, この増加傾向の主体をなすものはEscherichia coliであることを指摘した1)。
以上のような起因菌の変遷による感染症の変貌の1っとしてOpportunistic infbctionが近年注目されてきており, 日和見感染という邦訳もあり, その定義も定着しつつある。 その概念は, 通常は生体内では病原性がないか, または低病原性と考えられていた微生物が, 感染抵抗性の減弱した宿主に誘発した感染症であるといいうる。
一方, 前にものべたように, グラム陽性球菌感染症が減少したことは, ある一面においてはこれらに特異的に抗菌力をもつ各種のPenicillin, Cephalosporinなどの抗菌性抗生物質の功績といつても過言ではないであろう。 しかし, グラム陽性球菌感染症が皆無になったわけではなく, 耐性ブドウ球菌出現の問題も含んで, やはり感染症の治療上ゆるがせにできないことが多々あることはまぎれもない事実である。
今回われわれは, Ampicillin (以下ABPCと略す) とCloxacillin (以下MCIPCと略す) の合剤であるViccillin S ‘Meiji’を点滴静注法によって, 産婦人科領域における感染症に使用する機会を得, いささかの知見を得たので, ここに考察を加えて報告する。

著者関連情報
© 公益財団法人 日本感染症医薬品協会
前の記事 次の記事
feedback
Top