The Japanese Journal of Antibiotics
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Sisomicinの小児科領域における検討
岩井 直一佐々木 明宮津 光伸大須賀 民子
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1980 年 33 巻 3 号 p. 333-351

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抄録

近年, 合成ペニシリン剤やセファロスポリン剤の多用に伴なつて, それらの薬剤に自然耐性であるか, 耐性を獲得したグラム陰性桿菌による感染症の増加が問題となつている。小児科領域でも, 抗癌剤, 免疫抑制剤, ステロイド剤などの使用によつて, Host側に抵抗性の減弱のあるばあいの感染症, 一過性の免疫不全の状態にある未熟児, 新生児期の感染症, 尿路通過障害などがある尿路感染症に, その傾向がうかがえる。一方, 小児における感染症は, 経過が早いのが特徴であり, 細菌の分離, 同定, 感受性試験の結果のでる前に治療を始めることも多い。こういった小児としての感染症の特殊性とβ-Lactam系抗生剤に抵抗性を示す細菌の増加から, アミノ配糖体系抗生剤が最初から選択されるばあいも多い。しかし, アミノ配糖体系抗生剤には, 腎障害, 第8脳神経障害などの副作用があり, その投与量, 投与期間にはおのずからきびしい制限がある。したがつて, 従来のものより抗菌力が強く, 副作用の少ないアミノ配糖体系抗生剤の開発は, 変貌しつつある感染症の治療に有用なものと考えられる。
Sisomicinは, 米国シェリング社で発見され, 西ドイツ・バイエル社と共同開発された新らしv・アミノ配糖体系抗生剤で, Micromnonospora inyoensisから産生されたものである1, 2)。各種のグラム陰性桿菌やStaphylococcusaureusに対して強い殺菌的効果をもち, その抗菌力はGentamicinと同等, またはそれ以上といわれている3, 4)。吸収, 排泄, 代謝および毒性の種類は, 他のアミノ配糖体系抗生剤と同様であるが, 腎毒性についてはGentamicinと同等, またはやや軽度であり, 聴器毒性についてはGentamicinよりも軽度であるといわれている4)。
今回, 我々は本剤の抗菌力, 吸排, 臨床使用における検討を小児科領域でおこなつたので, その成績を報告する。

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