The Japanese Journal of Antibiotics
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小児科領域における急性感染症, 特に猩紅熱に対するCefadroxilシロップ剤の治験成績
南谷 幹夫八森 啓中沢 秀夫友利 典子
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1981 年 34 巻 2 号 p. 161-170

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抄録

Cephalosporin C系抗生物質では, Cephalothin, Cephaloridineが細菌感染症に対する治療薬剤として登場し, 次いでCefazolin (CEZ) が開発されて広く臨床的に応用され, 期待された治療効果をあげ, その後も新らしい開発が進められている。しかし, これらはいずれも注射薬であり, 中等症以下の感染症の治療として, 殊に小児科領域における使用には困難を感ずるものであつた。経口剤には, Cephaloglycinに次ぎCephalexin (CEX) が実用化され, 今日までヵプセル剤とともに小児用ドライシロップが多く用いられてきた。
Cefadroxil (CDX) は, 米国Bristol-Myers社で開発された半合成の経口用Cephalosporin剤で, 分子式はC16H17N3O5S・H2O, 分子量は381.40で, Fig.1のようなCephalexinに類似した構造式で, 7位置換基のフェニル核のパラ位に水酸基をもつ点が異なる。本剤の抗菌スペクトラムは, Cephalexinとほぼ同じであるが,Staphylococcus aureus, S. epidermidis, Streptococcus pyogenes, Klebsiella pneumoniaeに対しては, Cephalexinよりも優れた抗菌力を示すとされる。また, 本剤は極めてよく吸収され, 血中濃度のピークはCephalexinとほぼ同等であるが, 持続性は長く, 食事による吸収への影響も少ない成績5) が示されている。
各種の動物試験による安全性, 臓器移行などの基礎試験およびPhase1試験ののち, わが国でも, 1978年2月から研究会が組織され, 成人に対する臨床治験が開始された。約1年間にわたる治験の結果, 成人1,377例の各種感染症に使用6) して, 74.5%の有効率をあげ, 副作用は軽度なものを含めても, 3.41%にすぎなかつたと発表された。
今回われわれは, Cefadroxilのシロップ用散 (1g中Cefadroxil 100mg含有, 淡黄白色) を猩紅熱を主とした2, 3の小児急性感染症に対し治験使用する機会を得たので, ここにその成績を報告する。

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